分かりやすく、視聴者を飽きさせない動画が理想

 中村さんは、企業主催の講演会などでもBtoB動画の意義や制作のポイントを伝えている。その場で質問を受ければ、制作のテクニックをあますことなく伝授しているという。「HRオンライン」にも、動画制作のポイントを教えてくれた。

中村 ポイントは「寄る」こと。とにかく被写体にグッとカメラを近づけることです。素人さんが何かを撮影すると、つい、「引き」気味の画像になってしまいます。研修動画の受講者はPC・スマホ・タブレットという小さな画面で学んでいるので、被写体を大きく見せることがポイントです。

「(動画が)どうしても長くなってしまう」という悩みも多いですね。「短くするポイントは、『短くする』という意識が大切」と私は答えます。先ほどお話ししたように、伝えたいものは伝える時間が短くなるほど「本質」が残っていきます。伝えたい側は、「あれもこれも全部伝えたい」のですが、聞く側は、「重要なことだけを知りたい」のです。伝える側と伝えられる側の立場の違いを理解し、視聴者の気持ちになって制作することが肝要です。

 また、最近は、「AIナレーション」も増えていて、「ナレーションは、AIと人のどちらが効果的か?」と迷う制作者もいるでしょう。私は、AIナレーションよりも「人」だと思います。動画に必要な「熱量」は、「人」ならではのしゃべり方の抑揚や間(ま)によって作り出されるからです。

「視聴者の集中力を高める研修動画は?」という質問には、「講師の話し方や目線誘導の優れている動画」と答えることができます。フリー素材を効果的に使った動画も集中力を高めますね。たとえば、テレワークの推進をメッセージするときに、テレワークのイメージ動画を短く挿入することで、「小社はテレワークを推進します」という文字よりも強い印象を残します。コンテンツに深みが増し、全体のベタッとした表現が立体的なものになるのです。私たちは、限られた予算内でそうしたプロの技を見せていきます。

 動画の時代。ユーチューバーに代表されるように、動画の送り手は、「とにかく、たくさんの人に見てほしい」という願望を持つが、BtoB動画の目指すべきことは何だろうか?

中村 プロモーション動画において、クライアントの担当者が「バズりたい!」とおっしゃることがあります。しかし、私たちが制作している動画はBtoBであり、BtoBの世界でいくらバズッてもしかたありません。大切なのは、「バズる」ことではなく、商品を分かりやすく伝えること。BtoC商品をプロモーションするテレビCMでは「クールでカッコいい」ものが求められることもあって、制作に何千万円もかけたりしますが、BtoBのプロモーション動画はリーズナブルであるべきでしょう。BtoCとBtoBの動画は「軸」が違い、私たちのBtoB動画は「分かりやすさ」を重視しています。「クリエイティブの方向性は?」と聞かれたときに、「分かりやすさです」と迷いなく答えるのがヒューマンセントリックスです。

 また、「研修動画」について言えば、リアル対面での集合研修は内容が面白くなくても中座できませんが、オンデマンドの研修動画は「停止」も「ながら視聴」も「見ているふり」もできます。ですから、クライアントの目的を確実に達成することを念頭に、視聴者にとって分かりやすく、飽きない動画を私たちは創り続けていきます。