片岡:「失踪する前に何か変わった行動はありませんでしたか?例えばヘッドハンティングなどが疑われる場合、情報を抜き取った痕跡などはありませんか?」

金子氏:「そこらへんは分かんねっす!仕事はナンバー2所有のパソコンでやってたし、自分とガールズバー行ったりして、いつも通りの行動をしてたから、自分も全く疑ってなかったっす!何とかナンバー2を今日中に見つけ出してほしいっす!海外とかに逃げられたら手遅れなんで!」

片岡:「逃げられたら手遅れって、何が手遅れなんですか?」

金子氏:「ナンバー2のやつ、金塊持って消えてんすよ!数億円分の!!マジぶっ殺してやりテェ!!」

片岡:「金塊!?」

金子氏:「そうっす!金塊を売られてしまったらもう取り戻せねっす!!これ見てて!」

 そう言うと金子氏はパソコンを開き、監視カメラの映像であろう動画を再生しました。そこには、ナンバー2が金庫から金塊を持ち出す姿が鮮明に映っていました。

 金子氏は「分かった!?やべえ奴なんすよ!金はいくらかかってもいいんで、警察よりも早く捜し出してくれよ!!」と言ってきました。

めちゃくちゃやばい案件
R探偵社調査員に詰め寄ると…

 飯岡氏は、契約は置いておいて、まずは調査方法を精査するためいったん持ち帰らせてほしいと言って、2人で逃げるように会社を出ました。その帰り道で私は飯岡氏に「めちゃくちゃやばい案件じゃないですか!あの金塊は非合法なにおいがしますよ!警察より先に見つけたいって、そういうことでしょう!?」と詰め寄りました。

「……すみません。……事前にざっくりと人を捜してほしいと相談されて、詳しい内容は打ち合わせの時に話すと一点張りだったものですから……片岡さんにはご迷惑をおかけしてすみません。これは探偵の範疇(はんちゅう)ではありませんね……」とうなだれる飯岡氏とともに足早に立ち去り、この案件はR探偵社が断りました。

 その後はどうなったかは分かりませんが、少しでもブラックなにおいの立ち込める案件は受けるわけにはいきません。刑事事件の可能性もあったので、探偵の手に負える案件ではありませんでした。