地銀が「DXアドバイザー」になるために避けられない「痛みと覚悟」Photo:PIXTA

デジタル化支援が
顧客の課題解決に直結

 最終回である本稿では、DXの元来の目的である顧客への新たな価値創出について、議論を展開したい。

 まず、企業に求められるDXとは、DXに関わる短期的な対応を行いつつ、競争優位の獲得という中長期的な戦略的ゴールに向かって繰り返し変革のアプローチを続けることである。デジタル技術の活用を前提に、コロナ禍前の「人が作業する業務プロセス」を、「顧客への価値創出に寄与するか」という視点で見直すことにより、大幅な生産性向上や顧客への新たな価値創出が期待できる。業務プロセスのレガシー化を防ぐためにも、こうした見直しを恒常的に行うことが必要である。

 またDXは、地域・中央といった立地の差や規模の大小に関係なく企業が成長するために必要な新たな価値創出に資する強力なツールとなる。しかし、多くの中小企業では、DX以前の問題として、IT機器の導入をはじめとするデジタイゼーション(注)の段階にさえも進んでいないのが現状である。

 こうしたなか、地方銀行がコロナ禍における中小企業の事業継続支援に加え、デジタル化支援によって生産性向上に寄与することは極めて重要である。