大まかには、「流通時価総額」(市場で流通していると推定されている株式の時価総額)100億円以上がプライム、10億円以上がスタンダード、5億円以上がグロースという区分だ。ところが、この基準はいかにも甘く、条件を満たす上で移行措置が設けられたこともあって、これまで2177社だった東証1部上場企業の1839社がプライムに移行した。

 今回設けられたプライム市場は、これまでの東証1部と大して変わらない。1社当たりの平均時価総額は、ほんの17%増えた(「日本経済新聞」4月4日朝刊1面)にすぎない。

 率直に言って、投資家の目で見て「魅力が増した」と言える要素はほとんどない。「東証が何をしたかったのか、全く分からない」という声もある。確かにその通りだと感じなくもない。

 だが、冷静に考えてみると、われわれは東証に多くを求めすぎているのではないだろうか。

世間にあえて異論を唱える
東証は案外よくやっている

 あえて、異論を唱えることにしよう。今回の市場再編にあって東証は、慎重に考えて「やれることを、やった」と評価したい。

 推察するに、大衆投資家が求めていた東証の市場再編は、増えすぎた東証1部上場企業の数を減らして、例えば500社程度(アンケートを採るとこのくらいの銘柄数を支持する投資家が多い)の精鋭企業を残す最上位市場の区分を作ることだったように思われる。仮に、この実現しなかった市場を「超プライム市場」とでも名付けよう。

「超プライム市場」ができるとことによって、次のようなストーリーが期待されていたように思われる。

(1)上場銘柄は時価総額が大きく流動性が高く投資しやすいため外国人投資家の資金が流入しやすくなる
(2)国際競争力の高い一流企業が集まるので株価が外国株に負けないくらい上昇することが期待できる
(3)上場企業は社会的ステータスが高い「超プライム市場」への上場とその維持を求めて競争するので、企業が株価向上のために今よりも頑張るようになる

 付け加えると、(4)500の上場銘柄で計算される「超プライム指数」に東証株価指数(TOPIX)を改組することで、小規模で低成長な銘柄にもTOPIX連動のインデックスファンドによって投資される「生ぬるい」状態を脱却すべし、とのTOPIX改革に期待する向きもあったかもしれない。

 率直に言って、いずれも幼稚な空論だと言うしかない。