東証1部からプライム市場に移行するための条件として、「流通株式時価総額100億円」という基準が設定された。業種ごとの流通株式時価総額ランキングを作成すると、老舗が多い電気機器と機械では、26社がプライム落ちの危機に直面していた。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#3では、その顔触れを紹介する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
パナソニックの“因縁企業”もワースト上位に浮上
電機・機械業種で流通株式時価総額が低い26社
今年の株主総会において、大株主とプロキシーファイト(委任状争奪戦)を繰り広げたパナソニックの“因縁企業”が、今再びマーケットで苦戦を強いられている――。
東京都千代田区に本社を構える大型コンベヤーメーカーのNCホールディングス(以下NC)。この企業は、今年の株主総会シーズンで注目銘柄の一つに挙がった。
なぜか。同社の株式を3割持つ大株主のTCSホールディングス(以下TCS)との間で、取締役の選任を巡り正面衝突した上に、TCSが提案した取締役候補にパナソニックのOBが含まれており、提案の真の狙いはNCをパナOBの“受け皿”にすることではないかという疑念が持ち上がったからだ。
しかも、NCの創業者は、今年6月にパナの新社長に就任した楠見雄規氏の祖父であったことで、波紋は広がった。NCの社長が楠見氏などパナの現経営陣に意見書を送るなど、NCとTCSの水面下の攻防戦は総会直前にまで及んだ。
結果として、2021年3月期でNCが過去最高益をたたき出していたことなど、NCの現経営陣の功績が認められたこともあり、TCSの株主提案は過半数の賛同を得られずに否決され、NCの経営陣が勝利する形で終幕を迎えた。
そのNCだが、今度は異なる観点からマーケットとの向き合い方が試されようとしている。来年4月に東京証券取引所の市場再編を迎えるに当たり、現在東証1部に上場しているNCは、新たな最上位の区分であるプライム市場への移行基準を満たしていないと目されるのだ。
東証は、プライム市場への移行基準の一つとして、発行済み株式数と、流動性の高い株式比率で計算される「流通株式時価総額」が100億円以上というバーを設けた。ダイヤモンド編集部の試算によると、NCの流通株式時価総額は39.1億円にとどまっている。
NCだけではない。東証の定義にのっとりダイヤモンド編集部が流通株式時価総額を算出し、東証1部上場企業のうちワースト300社を抽出したところ、NCと似たような機械や電気機器の業種の企業が26社ランクインした。これら全ての企業に今、プライム落ちの危機が迫っている。
なお、前述のNCの順位はワースト8位だった。他にはどのような企業がランクインしたのか。早速次ページから、NCを含めた26社の実名を紹介しよう。