東証再編#14Photo:Stefano Madrigali/gettyimages

時価総額が数千億円あっても、東証プライム市場の基準を満たさない企業がある。特集『東証再編 664社に迫る大淘汰』(全25回)の#14で焦点を絞るのは、親会社が株を大量に保有しているために市場で流通する株式数が少ない、ゆうちょ銀行や近鉄百貨店といった企業だ。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

ゆうちょ銀も「プライム不合格」
流通株式比率が少ない企業の悩み

「株式を手放していくスタンスはもう開示しているし、『時が来るまで話せません』というだけで、方向性は変わらないはずだ」

 そう念押しする大手証券会社幹部の目には、少し心配の色が映っていた。話題に上ったのは、東証の市場再編を巡り業界関係者が動向を注視する企業の一つ、ゆうちょ銀行だ。

 東証1部上場のゆうちょ銀は、時価総額4兆円超えの巨大企業。それでも関係者の耳目を集めるのは、新たに最上位市場となるプライムへの移行基準として課された「流通株式比率35%以上」が未達であるためだ。

 流通株式比率とは、発行済み株式数から10%以上所有する主要株主や企業同士の持ち合い株式などを除いた、流動性が高い株式の割合を示す数字だ。ゆうちょ銀が流通株式比率35%以上を達成していない背景には、親会社である日本郵政が、実に89%ものゆうちょ銀株を保有していることがある。

 ダイヤモンド編集部の試算によると、ゆうちょ銀の流通株式比率はわずかに9.13%であり、他の上場企業より流通株式比率が1桁足りない状況にある。

 日本郵政は、2025年度までの中期経営計画内でゆうちょ銀への出資比率を50%以下にすると打ち出している。それに呼応するかのように、ゆうちょ銀もプライム市場への残留を目指すと公言済みだ。

 それでも、ゆうちょ銀への出資比率が減ってしまうと、業績不振の日本郵政にとって、配当収入の減少やビジネスモデルの再構築など憂い事が増える一方だ。冒頭の証券幹部の心配は、こうした状況を踏まえてのものだろう。

 ゆうちょ銀以外にも、同じような株式の流動性で悩む東証1部上場企業は存在している。今回ダイヤモンド編集部は、東証の基準にのっとって流通株式比率を独自試算。流通株式比率30%未満というバーで区切ると、33社の企業がリストアップされた。

 今回は、33社を流通株式比率が低い順にランキング。その中で、ゆうちょ銀のように時価総額が1000億円を超える大企業は10社あった。次ページから、その一覧を紹介していこう。