「この録音を公開しなさいよ」

 男性は次第に、「あなたたちも大変なんですね。あなたたちも私と同じ庶民なんですよね。こういうときに庶民がバカを見る……」と相手をいたわり始め、「ぼくらはどうすればいいんでしょう?」と尋ねた。すると、電話の相手の彼女は笑い声を上げてこう言った。

「この録音を公開しなさいよ」

 その直前に「これ録音中ですから」と男性に言われ、「わたしの許可もなしに?」とムッとした声を上げていたこの女性の言葉に、逆に男性が驚いた。「でも、公開するとあなたに迷惑がかかるでしょ……」

 二人で意見交換を終えてから、男性はお礼を言って電話を切った。後に明らかになったところによると、彼は保険会社に勤めているらしい。男性はこの録音を公開し、そして多くの人たちがそれをシェアした。この女性職員の勇気に感動し、「彼女は守られねば」という声も上がった。

 だが、その直後「政府職員は、必要以上のことを語らず、答えないこと」を徹底するようにという通知が下達された。ネットでは彼女の名前も暴露されているので、当局は当然彼女を特定できているはずだ。その後彼女がいかなる立場に置かれているかの続報は、残念ながらまだ流れてきていない。