企業が目指すべきは、自社で働くことの「自分ごと化」
1次・2次と面接が進むにつれ、候補者も絞られてくる。人事担当者や面接官といった採用する側がハマりがちな落とし穴はどのようなものがあるか。
福重 学生の気持ちをあまり考えずに、「うちの会社はいいよ!」とPRし過ぎることです。真面目な人事担当者や面接官ほど、自社を一生懸命にアピールしがちなので、注意が必要です。さらに言えば、自社の自慢をさんざんした後、「あの会社は……」といった比較をするのは学生からみると最悪です。「うちの会社に入りなさい」と強要されているようにしか聞こえません。
言うまでもなく、採用面接においては、自社のことを話すことも重要ですが、学生の話を聞き出すことが大切です。就活に臨む学生の関心事に寄り添い、ひとつでもその琴線にひっかかる会話ができ、そこから自社で働くことを「自分ごと化」してもらうことが重要なのです。
有名人気企業は別として、これからの新卒採用は、「学生から自社をどう選んでもらうかの競争」が激しくなるだろう。その競争に勝つためのカギとなるのが、学生に、自社で働くことを「自分ごと化」してもらうことだ。
福重 たとえば、「この会社で、こういう仕事ができたら面白そうだな」「自分はこんなふうに働くんだろうな」「この先輩と働けたらいいな」とイメージできれば、その学生にとっての志望度を上げるための材料が揃います。時価総額や売上規模、社員数などのスペックだけで企業を選んでいるわけではありません。学生は多様な情報を求めています。「こんな先輩がいるんだ」「管理職はこういう人たちだ」「社内の雰囲気はそういう感じか」と分かれば、その会社で働く自分が具体的にイメージできるのではないでしょうか。また、忘れてならないのは、そうしたリアルな情報は、ホームページやパンフレットといった公式なメディアよりも、人事担当者や面接官の何気ないひと言や雰囲気から伝わるということです。リアルの面接であれば、最寄り駅から会社まで歩いていき、近くの街の雰囲気や社内の様子を感じ取れますが、オンラインではそうした「自分ごと化」するための情報を得る機会が少なくなっていることを、経営者や人事担当の方には意識していただきたいです。
そもそも、採用面接は学生がその企業を知る絶好のチャンスです。ですから、企業が学生を選ぶ場ではなく、自社をアピールするチャンスととらえるべきでしょう。学生と一対一で向き合いながら、自社のカラーや強み、社風を、「うちの会社はいいよ!」と一方的にメッセージするのではなく、さりげなく、かつ効果的にどう伝えていけばよいか――それをどん欲に考えていくことをおすすめします。