採用上手な企業が行っている「戦略」の組み立て方

 学生ごとに「気持ちの旬」は違うので、内定(内々定)を出すタイミングはそれぞれの学生で変えていくのがベストかもしれない。実際、100人以上を採用する大企業は、第1陣、第2陣といったかたちで内定(内々定)を出すケースが多いようだ。規模の大小にかかわらず、採用上手な企業はどのようなかたちで「内定(内々定)出しの戦略」を組み立てているのだろうか。

福重 ひとつのモデルで説明してみましょう。まず、応募者をAからEまで5つのグループに分けます。
Aグループは、人物的に優秀で、志望動機も高い学生で、企業にとっては理想的な応募者です。最初に内定・内々定を出すのはこのグループになります。しかし、こうした優秀な学生は他社も欲しがっているはずですし、あなたの会社だけを受けているわけではありません。実は希少種グループかもしれません。

 多くの企業にとってメインになるのがBグループの応募者です。このグループは他社からの声がかかるし、他社との間で迷っているので、確実に採用するには自社への志望度を上げる必要があります。そのために重要なことが、先ほど触れた「自分ごと化」です。このグループの学生の存在は採用戦略そのものを左右するため、インターンシップなどを通じてできるだけたくさん集めることも欠かせません。各企業はこのグループの学生を囲い込むため、人手も時間も知恵もあらゆる資源を投入します。

 Cグループは、A・Bグループに比べると人物的には少し評価の低い応募者です。ただ、志望度が高いので、内定・内々定を出せばほぼ確実に入社してくれる学生たちであり、採用枠が埋まらないときにはありがたい存在になります。志望度が高いのですから、もちろん、A・Bグループの学生同様に、丁寧にフォローしておくべきです。

 採用活動がかなり進んだ段階で、採用計画における予定人数に足りなそうなとき、あるいはオーバーしそうなときにはどのような対応が考えられるだろうか。

福重 人数オーバーに関しては先ほどのグループ分けが適切にできていれば「数ヨミ」はある程度調整可能かと思います。

 予定人数に届かないケースでは、あと1人や少人数程度なら紹介会社を使うのもひとつの手です。問題は、採用予定数を大幅に割り込みそうな場合です。これについては「特効薬はない」というのが正直なところ。採用広告などに予算をかけるのではなく、遠回りかもしれませんが、会社の魅力を時間をかけて高めていくことが理想です。

 そもそも、新卒・中途採用とも、企業の採用活動における最大の武器は「(現役の)自社社員」です。現役社員が自慢できるような会社であれば、会社の知名度に関係なく、社員のリファラル採用といった手法も使えます。現役の社員が現状に満足していれば、「実はうちの会社は新卒を募集していて……」と、知り合いや後輩に声をかけてくれます。それが現状できていないのであれば時間はかかりますが現役社員の満足する環境をつくることが採用戦略を成功させる王道であり、そうした環境の職場であれば、将来にわたって安定的に、新卒であっても中途であっても採用できるようになるはずです。

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