命令と目の前の窮状の狭間で
苦悩する行政職員たち

 中国のSNSでは先日、ある投稿が大きく拡散され、人々の共感を呼んだ。その内容は、居民委員会(以下、居委会)の窮状をまとめたものだ。

「110(警察)、120(救急車)、12345(市民サービスホットライン)に電話したら、全て居委会に言ってくれと言われる。届けられた荷物の仕分け・配達、ゴミ収集、薬の配達、陽性者の移動・隔離、PCR検査……全て居委会の仕事だ」

「PCR検査時の無秩序、陽性者を隔離施設への搬送遅れ、病院が患者を門前払い、食料が届かない……これらが全て居委会のせいにされている」

「居委会の職員は人間ではなく、ロボットなのか?」――。

 居委会の職員やボランティアは冷血な人ばかりではない。どちらかと言えば、良識があって優しい人がほとんどだ。ただ、上からの「命令」と、目の前で起こる住民の窮状との間に挟まれて、大変苦しい立場に立たされている。

 彼らも生身の人間である。住民との応対でつい本音をぽろっと出したり、涙を流したり、自分の立場を忘れて規則を破ったりすることが度々あったようだ。

 先日、ある小区における居委会の男性責任者と、女性看護師の住民との電話でのやりとりの録音がSNSで拡散された。

 女性はロックダウンで部屋から出られないが、勤務の病院の婦長から出勤してほしいと頼まれたという。

男性責任者 「病院のどの部門の責任者から頼まれた? あなたを行かせることで、私は重大な責任を負わなければならない。もちろん、今医療現場の人手が不足していることは分かっている……。どうしたらいいのか、本当に難しいんだ。

(むせび泣く声で)このようなケースがたくさんあるんだ。現場はもう崩壊寸前だ。病院へ行ってしまったらもうここには戻ってこられないが、それでいいのか?」

女性 「病院に泊まる覚悟でいる」

男性 「分かった。じゃあ、行ってきな。ただ、PCR検査の結果が出てからね。(泣き続ける男性)本当は、戻ってきてほしい。その時に、ついでに困っている住民の必需品も買ってきてほしいんだ」

女性 「(泣き声で)はい。分かった、分かった」

 このやりとりは、現場職員の苦しさを象徴するケースだといえる。