「中国政府の命令か、住民の声か」上海の封鎖現場で職員が苦悩、自殺の悲劇もPhoto:VCG/gettyimages

中国・上海が新型コロナウイルスの感染拡大によりロックダウン(都市封鎖)されてから半月以上が経過した。地域によっては1カ月以上も外に出られていない人がおり、市民の不満は限界に達している。また市民だけでなく、現場でPCR検査や医療に従事するスタッフも、ルールと目の前の窮状の狭間で苦悩している。(日中福祉プランニング代表 王 青)

長引くロックダウンに
現場職員も疲弊

 中国・上海市がロックダウンの事態に陥ってからもう半月以上が経過した。4月12日に一定の条件付きで一部の地域の封鎖が解除されたが、4月20日時点で約7割の地域では封鎖解除のめどが立っていない。早くからロックダウンが実施された地域では1カ月以上も封鎖された状態が続いていて、市民はいら立ちを募らせている。

 毎日のように大規模なPCR検査が行われ、陽性であれば軽症でも無症状でも一律で隔離施設に送り込まれる。隔離施設は短期間で設置されたため、設備や衛生環境などが整っていないところが少なくない。

 また、ロックダウン下で何より問題となっているのが、「深刻な食料不足」と「必要な医療が受けられないこと」だ。「最後の一袋の即席麺。お金は底をついてしまった」「病院に治療を断られて、あとは死を待つしかない……」といった悲鳴にも似た投稿が、毎日のようにSNSに上がっている。

 現在、ロックダウン下の市民と直接対峙(たいじ)しているのは、「居民委員会」という政府の末端組織だ。行政組織の序列では、「市→区→街道弁事処→居民委員会」という位置付けになる。居民委員会は、住宅街の社区(コミュニティー)の範囲を管轄している(一つの社区が数カ所の「小区」で構成される。「小区」とは塀に囲まれた敷地内に建てられた数棟~数十棟のマンション群)。

 その都市によるが、上海市の場合は一つの社区に約1000~1500世帯、約3000〜5000人が暮らしている。現在、上海市には約6700の居民委員会がある(詳細は、記事『中国のコロナ対策で大活躍、行政の末端組織「居民委員会」の実態』を参照)。

 莫大な業務量をこなしている現場の職員と多くのボランティアは、長らく続くロックダウン下で疲弊し、心身ともに限界に近付いている。上からの命令を忠実に実行すべきか、困っている住民やいろいろな判断を迫られる事案に対して融通を利かせるべきか……常に板ばさみ状態だ。