キハ183系・特急あそぼーい!鹿児島本線を走行するキハ183系・特急あそぼーい! Photo:PIXTA

ゴールデンウイーク初日の4月29日、JR九州の豊肥本線を走る展望席付き観光特急「あそぼーい!」が倒木と衝突する事故が発生した。幸いけが人はいなかったものの、事故の状況から、JR九州の安全体制に重大な問題が潜んでいる可能性もある。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

観光特急「あそぼーい!」の
「倒木衝突」動画が拡散

 4月29日の正午ごろ、JR九州の豊肥本線を走る展望席付き観光特急「あそぼーい!」が倒木と衝突する事故が発生した。衝撃で先頭車両の窓ガラスにヒビが入り、展望席の乗客2人にガラスが飛散したが、けが人はいなかった。

 一部のローカルニュースを除き、マスコミはほとんど報じなかったが、当該列車の展望席でたまたま前方風景を撮影していた鉄道ファンが事故時の映像をSNSで公開したことから、ネット上ではちょっとした騒動となった。

衝突事故は3分ごろから

 というのも、線路上に木が覆いかぶさっているというのにブレーキをかける気配もなく進み、そのまま倒木と衝突。車内に乗客の悲鳴と激しい衝撃音が響く中、それでも列車は速度を緩めることなく次の駅まで走り続けた様子が収められていたからだ。

 改めて事故の経緯をたどろう。熊本駅を9時9分に発車した下り「あそぼーい!」(4両編成、乗客約90人)は、豊肥本線竹中駅(大分県大分市)を通過後、時速70キロで走行中に12時2分ごろに線路上に倒れかかった木と衝突した。

 大分市では未明から昼にかけて合計11ミリの雨が降っており、12時前後には最大瞬間風速10メートル前後の強風が吹いていたことから、風雨の影響で木が倒れたものと考えられる。