ところが、2003年の調査ではフィンランドが大きく躍進する。この年は4分野で調査されたが、フィンランドは数学的リテラシーで2位、読解力で1位、科学的リテラシーで1位、問題解決力で2位(香港と同率)を獲得するのである。

 フィンランド式教育の評判は2000年あたりからかなり高まっていたが、ここで「フィンランド(式教育)ブーム」と呼ぶべき状態が起き、日本でも「フィンランドを目指せ」という機運が起こるのである。

 文科省によるいわゆる「ゆとり教育」が2002年を境に強化されて2010年頃まで続いたが、その背景にフィンランド式教育の影響があったのは間違いないだろう。フィンランド式教育はいつの間にか日本の「詰め込み教育」の対義語のような存在となり、日本の教育が目指す新たな目標になったのである。

パーセントの計算すら
できない学生たち

 冒頭にフィンランドが義務教育の期間を18歳まで延ばすと発表して、日本で絶賛されたと述べたが、その多くは「フィンランドはいまだに教育世界一だ」と考えている人たちではないだろうか。

 だが、2018年調査では、読解力と科学的リテラシーで3位であったが、数学的リテラシーは11位まで落ち込んでいるのである。

 つまり、あれほど絶賛されたフィンランド式教育では、かなり深刻な算数・数学における学力低下が起こっているのだ。フィンランドに代わって「学力世界一」に輝いているのが、旧ソ連のバルト3国の一つで、現在ではIT大国として名高いエストニアである。

 エストニアは2018年調査で、読解力と科学的リテラシーで1位、数学的リテラシーで3位となっている。