子ども時代に右利きから
左利きへ矯正し、大成功

 球技以外でも左利きならではのメリットがある。それは、柔道などの武道や格闘技だ。

「最も影響が大きいのは、武道や格闘技でしょう。右利きは、慣れない左側から攻め込まれると疲労が大きく、集中力を失いやすくなるため、左利きの選手のほうが勝率が高いという研究結果もあります」(『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』より)

 2021年の東京オリンピックでも、左利きの選手の活躍が光った。100キロ級代表のウルフ・アロン選手のように、組み手が左組みの選手が多くの金メダルを獲得している。

 ただし柔道では、右組みと左組み両方できるようにトレーニングする選手も少なくない。球技は片方の手や足に動きが偏りがちだが、柔道では右と左両方をバランスよく使って技を繰り出したり、相手の技をかわしたりしなくてはならないからだ。

 ウルフ・アロン選手も小学校4年までは右組みだったが、左組みへ変更。右組みの経験を持ちながら左組みの技術と経験を積み重ねたことが、金メダルを獲得した強さの秘訣かもしれない。

 右でも左でもスムーズに体を動かすことができる両利きは、相手から攻め込まれる弱点を少なくできる。それは球技でも同様だ。後天的に両利きになった球技のアスリートのひとりが、テニスのラファエル・ナダル選手である。

 ナダル選手は、世界トップクラスのテニスプレーヤーだ。両利きとして知られているが、生まれつき右利きだったという。

 ナダル選手は少年時代にコーチから受けた助言をきっかけに、右利きから左利きへと矯正。成長したナダル選手は、歴史に名を残す名テニスプレーヤーとなった。

 右利きの弱点を克服し、左利きの攻め方を取り入れたウルフ・アロン選手とナダル選手。どちらの選手も、利き手の矯正を始めたのは子ども時代だ。大人になってから利き手や利き足を変更し、両利きになることは可能なのだろうか。