スマートウオッチ用OSではアップルより先行していたグーグル

 スマートフォン市場においてiPhoneに対するAndroidがそうであったように、グーグルはスマートウオッチについてもWear OS(旧Android Wear)と呼ばれるOSを用意して、ハードメーカーに提供するという戦略を採った。

Pixel WatchPixel Watch Photo:Google

 ご存じのように、グーグルの収益の核となっているのは、同社のサービス利用者から得られるビッグデータに基づく広告事業である。2021年10月に米司法省から、ネット検索と広告で「違法な独占」を維持しているとして提訴されたのに続き、今年の5月19日には、アメリカの超党派上院議員によって、オンライン広告事業を強制分割する可能性のある新法案「Competition and Transparency in Digital Advertising Act」(デジタル広告における競争と透明性に関する法)が議会に提出されたほど、グーグルの広告事業は強大なものだ(ちなみに、後者の対象企業には、メタとアマゾンも名を連ねている)。

 つまりグーグルにとっては、自社のOSを多くのハードメーカーに採用してもらうことが、ビッグデータを収集する上で有利なため、スマートフォンでもスマートウオッチでもそうした戦略を採ったわけだ。また、Apple WatchはiPhoneとペアリングして使うことが前提であるのに対し、Wear OS搭載のスマートウオッチは、AndroidスマートフォンでもiPhoneでも、どちらとも連携して利用することが可能であり、これもグーグルのビジネスのあり方を考えれば納得できる仕様といえる。

 実はAndroid Wearは、Apple Watchが登場する4年前から存在し、それを搭載したスマートウオッチも販売されていた。だがその時点ではApple Watchのような明確な方向性に欠け、カードをスワイプするようなユーザーインターフェースが使いにくく、対応アプリも揃わなかったという事情で、機能的には、より安価なフィットネストラッカーで事足りるような状態だった。その後、Apple Watchが市場投入されたことによってWear OSの開発目標も明確化し、仕様的にも高機能化してきた経緯がある。