◆仕事が終わらない
◇最優先すべきこと

 やるべきことが溢れ、毎日何かに追われている感覚は多くの人に共通する。残業が続き、プライベートの時間が削られることもある。

 ITやAI、様々な発明や発見によって従来の仕事が自動化、省力化されていっても、やるべきことは減らない。優先順位をつけて取捨選択しなければならない。

 何より大切なのは「自分の幸せ」だ。同時に「愛する人の幸せ」である。これらを犠牲にしてまでやるべきことはこの世にない。

 どれを切り捨てるか決めよう。罪悪感を抱く必要はない。思い切ってあきらめよう。

 産業医として、「またミスしてしまった」という悩みもよく聞く。人間ならば誰でも失敗する。失敗を分解して振り返ってみよう。気づかなかった「よかったポイント」を見つけられる。失敗した自分を責める前に、失敗に至るまでの経過や成果をほめてあげることこそ、何より先に行うべきだ。

 失敗は、ある時点では“失敗”と判断されるかもしれない。しかし長い目で見ると「成功への途中」とも言える。1つの失敗の裏に多くの成功があることを忘れてはいけない。

◇職場での感情コントロール

 忙しくてついイライラしてしまう経験は多くの人にあるだろう。怒りの感情はあってよい。全ては怒りを認めることから始まる。

 自然に生じる怒りの感情を敵視し、無理に押し込めようとすると、一層いら立つ。本当は怒りたいときに“クール”を装うと、交感神経を過剰に刺激して高血圧や心筋梗塞のリスクが高まるなど、身体に悪影響を及ぼす。怒りの感情に対し、我慢は禁物だ。

 怒りをクールダウンさせる「アンガーマネジメント」の手法は、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングとして有名だ。その1つに「カウンティング」がある。イライラした瞬間から、「1、2、……、10」と、10まで数えるだけの、非常に簡単な方法だ。

 職場で「断るのが苦手」と悩む人は多い。限界を感じつつも、仕事を頼まれて「大丈夫です」と無理して引き受けてしまう。同様に、上司などへの相談が苦手な人も少なくない。

 職場でありそうな場面を設定して訓練し、「断る」「相談する」に慣れていこう。災害時にとっさに体が動く避難訓練のように、心の状態が限界に達して「もう無理」と思った時に、とっさに断りの言葉が出てくるように訓練しておこう。