SNSで、自分が好きなものよりも、「いいね」と周囲の共感が得られるものばかり載せている人は少なくない。それが行き過ぎると、「誰に認められたらリターンが大きいか」と考えが歪み、好悪の感情ではなく、損得勘定(損得感情)で人間関係を作ってしまう。

 周囲のことは全て無視し、心から湧き上がる自然な気持ちを大切にしてほしい。「好き」と思うその自然な気持ちこそ、心の核になる自分の評価軸だ。自分の好きだと思うものや人に対し、他人は関係ない。

 評価軸から外れ、好きでもない人に「どう気に入られようか」と考えると、心に負荷がかかってしまう。

 自分の中にある新しい自分自身を引き出してくれるのは他人である。自分の評価軸を新たに作るには、初対面の人と接点や、初体験のことへの積極参加が有効だ。

◇“嫌な奴”との付き合い方

 上司の存在は会社で快適に過ごせるかどうかに影響する最大の要素の1つだ。

 指導とハラスメントの間の「グレーな攻め方」で攻撃してくる非常に厄介な“潰し屋上司”も中にはいる。そんな上司には「近づかない」のが大原則だ。物理的に極力近づかないようにしつつ、心理的な距離を取る。有効なのが、うつ病などの治療にも使われる「メタ認知」だ。「自分の存在を客観的に見つめる」もので、認知行動療法の基礎になっている。

 自分が鳥になって空から全体を眺め、第三者的な視線で、自身と周囲の関係を俯瞰するイメージだ。すると、上司が「自分の人生に与える影響はとても小さい、ちっぽけな存在」だと認知を変えていけるだろう。

 著者は精神科医として、自分を犠牲にしてまで付き合うべき人や仕事は、この世に1つもないと話す。

 実社会では、物理的な距離が取れない場面も多いだろう。そのような時には「期間限定の思考」で応じてほしいという。どんなにつらいことも、終わりが見えているのとそうでないのとでは、心の持ちようが全く違ってくる。終わりがあるから頑張れるものだ。「期間限定の付き合いでいいや」と決めると、心に余裕が出てくる。