「Nice to meet you」
メール上では何と書けばよいか?

 さて、冒頭の疑問に戻りましょう。

田中慶子・同時通訳者田中慶子(たなか・けいこ)
同時通訳者、Art of Communication代表。ダライ・ラマ、テイラー・スウィフト、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、U2のBONO、オードリー・タン台湾IT担当大臣などの通訳を経験。「英語の壁を乗り越えて世界で活躍する日本人を一人でも増やすこと」をミッションに掲げ、英語コーチングやエクゼクティブコーチングも行う。著書に『不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由』(KADOKAWA)。

 同僚などから紹介を受け、たとえば新規の取引先に初めてあいさつをするとします。相手が目の前にいるのであれば、「Nice to meet you」(お会いできてうれしいです)と言えばいいでしょう。では、メール上では何と書けばよいのでしょうか?

 そのようなときに便利なのが、「Nice to “e-meet” you」という表現です。

「electronic mail」(電子メール)を略した「e-mail」と同様、「e-」は「electronic」の略ですね。「meet」の前に「e-」を付けることで、「電子上でお会いする」というニュアンスになります。つまり、「(直接ではなく)メール上ではありますが、お会いできてうれしいです」という気持ちが込められているのです。

 この表現は、最近でこそよく見かけるようになりましたが、それでも比較的、新しい造語であり、「知り合えてうれしい」という気持ちを、少しユーモアを込めて表現するために、”e-meet”と、クオテーション(“ ”)を付けて強調して使われることが多いようです。

 直接会ってもいない、メール上のみのやりとりの場合、「はて、何とごあいさつすべきか……」と迷うことが多かったのですが、この「Nice to “e-meet” you」という表現を目にしたときは、うまいことを言うものだなぁと、感心したものです。

 なお、こういったメールの場合でも、2回目以降のやりとりとなると、「すでにお互い知っている」状態とみなし、「meet」は使いません。代わって、「Nice to hear from you」(ご連絡いただけてうれしいです)のように「hear」を使います。

 文で連絡が届いているのに、「見る」ではなく「聞く」とは、これまたややこしいですね。言葉の表現は、やはり奥が深いです。

【英語ひとこと講座】
「meet」には「初めて会う」というニュアンスが含まれます。すでに会ったことのある人には「see」を使います。そのため、初めて会う人には「Nice to meet you」を、以前に会ったことがある人には「Nice to see you」といった表現を用いましょう。