「meet」と「see」、同じ「会う」でも
使うシーンは明確に分けられている

 周囲の人は同じようなケースで何と言っているのかを観察してみると、「Nice to meet you」ではなく、「Nice to see you」という表現を使っていることに気がつきました。

 人に会ったときには「meet」(会う)ではないの? 日本では「see」は「見る」と習ったけれど……と不思議に思いつつ、さらにリサーチを続けます。すると、どうやら、以前に会ったことがある人や、すでに知っている人に対しては、「Nice to meet you」ではなく、「Nice to see you」を使うことが一般的であることがわかりました。

 アメリカでは、自宅に知人を招いたり、オフィスでカジュアルなパーティーが開催されることがよくあります。あるとき、友人のホームパーティーに招かれました。そこで出会った人と会話をしていたら、主催者である知人がやってきて、「Have you met each other?」(お互い、もう会った?)と聞いてきたのです。

 もう会ったも何も、今まさにそのお相手のかたと話している最中なのに、「会った」かどうかを聞かれるのはどういうことだろう。私が思わずキョトンとしていると、相手の方が「not officially」(正式にはまだです)とおっしゃるではありませんか。

 それを受けて今度はその主催者が、「あら、ごめんなさい。こちらは日本から来ているケイコで、この方は友人の〇〇よ」と紹介を始めました。するとその方は、「Nice to meet you」(お会いできてうれしいです)と握手をしてきました。この一連のやりとりを見て、「正式に会う(meet)」ことが完了したことを悟りました。

 このように、「meet」という言葉には、「初めて会う」というニュアンスが含まれています。これに対し、過去に会ったことがある人や、すでに知っている人には「see」を使います。

 そのため、街でクラスメートに会って「nice to meet you」と伝えたら、まるで初めて会う人へのあいさつのように聞こえて、笑われてしまったわけです。

 同僚と話していて、別の知人の話題になったときに、「最近、〇〇に会った?」というような会話はよくあると思います。この場合も、対象が共通の友人であれば、「Did you see him(her) recently ?」のように、「see」を使います。これを、「Did you meet him(her) recently?」のように「meet」を使うと、会ったことのない人について話をしているニュアンスになってしまうのです。

 いずれにせよ、学校の英語の授業では「会う」は「meet」と習ったと思いますが、実際の英語によるコミュニケーションの現場では、「会う」を表現する際、「meet」のほかに「see」もよく使われており、同じ「会う」でも、使うシーンは明確に分けられていることを、覚えておくとよいでしょう。

 なお、お別れするときにも、初めて会った相手には「meet」を、以前にも会ったことがある人や知人には「see」を使います。「It was nice meeting you」「Nice meeting you」や、「It was nice seeing you」「Nice seeing you」のように、「meet」や「see」に「〜ing」を付けることで、「お会いできてうれしかった」というニュアンスになります。