事件に巻き込まれたときの
具体的な対処方法

 もしも実際にショッピングセンターや空港などで銃声を聞いた場合、どのように対処すればいいのか。

「もし、相手がどんな銃を持っているか確認できたなら、ハンドガン(ピストル)なのか自動小銃(ライフル)なのかで対処が違います。ハンドガンは遠ければまず当たりません。ハンドガンを持っている相手が遠くにいるなら、走って逃げることで危険を回避できる。ただし、相手が複数いて、なおかつ、自動小銃を装備していれば、その場に伏せるしかありません」

 自動小銃の危険性とはどれほどのものなのか。

「自動小銃はハンドガンに比べて初速が高く、また、銃弾は高速で回転しています。そのため、着弾後の筋肉や血管をねじり、破壊しながら体を貫通して出ていくのです。特に胸から腹にかけてのバイタルゾーン(致命的部位)に当たると止血が難しく、命の危険にさらされるリスクが高いのです」

 自動小銃の射程距離はどれぐらいなのか。

「訓練された兵隊が自動小銃を持てば、300~400m程度の距離なら十分に狙撃できます。もしも立ち上がったりして相手に見つかれば狙撃されるリスクは格段に高まります。テロリストらが自動小銃で狙撃する際、相手の腰から肩までを撃つことが多いのです。実際、テロや銃撃戦の犠牲者のほとんどが上半身に銃弾を受けています。したがって、低い姿勢を取るだけで安全度は上がります」

 だが、こうした突然の事態に直面すると、多くの人が思うように動けなくなるいう。

「立っている状態から、伏せるだけでいいのですが、慣れていないと難しいのです。勢いよく地面に手をついて手首を骨折する危険がありますし、膝や肘を強打する可能性もあるため、あらかじめ伏せる動きの訓練をして慣れておくべきでしょう」

 では伏せた後はどうすればいいのか。

「伏せたままの状態で、相手の死角や物陰に隠れられるようなら、姿勢を低く保ったままで移動します。その際、バッグなどを持っているならバッグで、何も持っていないなら素手で、頭部を覆います。頭部は負傷すると出血量が多く、致命率が上がります。また、大量の出血は死の恐怖を引き起こし、冷静な行動が取れなくなる可能性があるからです」