位置情報確認ツールは平時に設定することもできるので、事前に端末を確認していただきたい。

 不正に個人の位置情報にアクセスすることは不正アクセス禁止法で規制されているが、本人の意思で自らの安否情報を指定された人に伝えることはもちろん合法だ。千葉氏は実習中、メンバー内では「Life360」という無料アプリで安否確認グループを作ってお互いの連絡を取っていた。

 また、旅行代理店や警備会社などから有料で提供されるサービスもある。日本旅行がビジネストラベルマネージメント(BTM)という出張者向けサービスツールを有料で提供している。旅行中の様々な手配が主なサービスだが、非常時には予約データとGPS機能の連携で危機管理担当者が迅速に情報を把握して対処する。他にも、専用端末の貸し出しをするタイプや子どもの登下校の見守り用など、さまざまなサービスがある。

 千葉氏は最後に、こうした事態に巻き込まれた際に最も重要なこととして次のように話した。

「身柄を拘束されたときの精神状態は一般の皆さんの想像をはるかに超えます。万が一の場合、生き残るために必要なことは『生き残る意思』です。そして、最後まで諦めない強い意思を持つためには、常日頃から心身ともに健康であることです」

 テロや凶悪犯罪に巻き込まれるリスクは何も海外に限ったことではない。国内の犯罪も凶悪化する中、日本で同様の事件が起きる可能性は十分にある。不測の事態に備える取り組みの重要性は、今後さらに高まっていくことだろう。

(国防ジャーナリスト/自衛官守る会代表 小笠原理恵)