もう一つの要因は、全国民主労働組合総連盟(略称「民主労総」)のような、世界的にも有数の戦闘的労働組合として知られる労組が存在することである。

 その過激な思想と戦闘力は、文在寅氏の思想と相まって、韓国に社会主義的な経済体質を導入する原因となった。さらに、民主労総による社会秩序を崩壊させるような行為を、文在寅政権は取り締まらず、むしろ助長したことから一層傲慢(ごうまん)になり、違法活動も当然のように行うようになった。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が秩序のある社会の実現と経済活動の健全化を目指すのであれば、民主労総の無法な活動を取り締まり、無力化させることが不可欠である。

 しかし、国会は今後2年間民主党が支配しており、新たな立法措置を作って抑制することはできない。その一方で、民主労総に対する国民の支持は、自分たちの利益のみ追求する過激な行動によって失われている。

 こうした状況で尹錫悦政権がいかなる手法で、民主労総を抑えて行くかは韓国社会の健全化への試金石である。

組合員数約70万人の最大労組
民主総連という労働貴族

 民主労総は、総組合数2032、組合員数69万3662人の韓国最大の労働団体である。加盟単産は16団体。主な団体は現代自動車労組、全国教職員労働組合、ソウル市地下鉄労組、全国建設産業労働組合連盟、全国公共運輸労働組合連盟などで、いずれも過激な団体である。

 民主労総は大企業・正規職労働者中心の労働組合として年収9200万ウォン(約960万円)などの既得権に執着するうちに、強行闘争中心路線を歩むようになった。