相続放棄写真はイメージです Photo:PIXTA

被相続人が、多くの資産と多くの借金を遺して亡くなった場合、資産だけを相続したいと考えるのは人情というもの。破産スレスレの兄弟姉妹に債務だけ引き継がせ、他の兄弟が資産だけを受け継ぎたいとの相談を受けた税理士は、どう回答したのか。多くの人が誤解しがちな「相続にまつわる債務の行方」について、税のプロが易しく解説する。※本稿は、内藤 克『残念な相続〈令和新版〉』(日経プレミアシリーズ)の一部を抜粋・編集したものです。

「父親の借金は放蕩息子に引き継がせ
自己破産してきれいにしたい」は無理!?

「先生、聞いてください。弟のギャンブル好きにはホトホト困り果ててるんです」

「亡くなったお母様も、弟さんのお金の使い方について心配していましたね」

「それなのに、この間もまたギャンブル仲間の借金の保証人になってしまって……。このままでは破産してしまいますよ」

「なんとか出直してほしいですね」

「今回の親父の相続も、閉鎖する事業の負債が多くて困っているんですよ。いっそ親父の負債を全部弟に引き継いでもらって、そのまま破産してもらいたいほどです!」

「債務については相手があることなので、そうはいかないんですよ」

「相続人同士が遺産分割協議書で決めてもですか?」

「はい」

 相続ではプラス財産だけでなくマイナス財産も引き継ぐ決まりになっています。そのため「親の借金が多すぎるので相続放棄した」という話もよく聞きます。

 ただし、債務は相続人である子供(第1順位)が放棄をしてもこの世から消えてなくなるわけではなく、第2順位である親、第3順位である兄弟姉妹に引き継がれるため、事前に親族に話を通しておかなければいけません。

 今回は放棄せずに借金を引き継ぐケースであり、「相続人同士で決めた割合が第三者である債権者に対して有効なのか」が問題となります。

 民法では「債務は遺産分割協議でどう決めようが遺言でどう指定しようが、法定相続分で引き継がれる」ことになっています。

 したがって、冒頭のケースのように相続人の1人に債務を押しつけて自己破産させた場合でも、第三者に対しては無効となり、相続人全員が法定相続分で負担することになります。これは、民法では債務の負担者や割合を調整することで、債権者に不利にならないように扱うことになっているためです。