事業領域の拡大とともに求められる “自律創造型人財”
永田 経営ビジョンや事業領域に合わせて、求められる社員像も変わっているのでしょうか?
中村 はい。社員の成長と活力こそが組織の成長、飛躍、変革を支えるものですし、事業環境の変化に対応した新たな“The JTB Way”を実現させていくためには、さまざまなことに柔軟に対応できる人材が必要になってきます。また、事業領域を広げるのであれば、旅行のことだけではなく、さまざまな専門分野に通じた見識の広い人材も求められるようになってくるでしょう。そうした考え方に基づいて、会社が行うべきことと社員が行うべきことをはっきり分けて、会社側としては、「社員の個性や多様性を尊重し、成長・挑戦の機会を提供することにより、エンゲージメントの高い、イノベーティブな組織風土の構築に努める」ことを、社員側としては、「“One JTB Values”に心から共感し、グループ経営方針を体現できる“自律創造型人財*4 ”を目指す」ことを人材に関する基本理念として設定したのです。
*4 「人材」ではなく、「人財」。本稿における中村氏・永田氏の発言においては、「自律創造型人財」というワード以外は、「人材」という表記を使用。
永田 “自律創造型人財”というワードは新しいものですか?
中村 私たちの企業経営の原動力となるのは「人」です。「お客様に提供する新たな価値を創出する源泉になるのは人材だ」という考え方があったので、これまでも人材育成の目標として、自律的に仕事をクリエイトしていく「自律創造型社員」を掲げていました。ただ、概念として不鮮明な部分があったうえに、具体的なアプローチ方法が“個人任せ”という問題点がありました。また、“The JTB Way”の見直しなどを進めるなかで、目指すべき人材像の方向性は事業環境の変化や経営戦略の刷新に合わせて変えていく必要があると思い至ったこともあり、“自律創造型人財”として改めて定義し直したのです。
永田 具体的にはどのような社員を“自律創造型人財”として定義したのでしょう?
中村 1つ目は、「マーケットや外部環境の変化をチャンスととらえて、自ら課題を立て、迅速に行動し、挑戦し続ける人」、2つ目は「自らの意志と努力で専門性を磨き、夢と好奇心で未来を描き、自己成長し続ける人」、3つ目は「国際的な視野をもち、多様性をもつ社内外のメンバーと協働し、新たな価値を創造し続ける人」。必要とされるマインドとして「お客さま志向、好奇心・未来志向、国際的な視野」、スキルとして「課題解決力、価値創造力、実行力」、行動として「挑戦、スピード、社内外との協働」を定義しました。