まず今年5月20日、横須賀を母港とする米空母「ロナルド・レーガン」が通常のパトロール任務に就くために護衛艦艇とともに出港した。

 次に21日に米海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」が艦載機を満載するという珍しい状態で横須賀基地に初入港した。しかも、横須賀を母港としない米空母の入港は数少なく、異例ずくめだろう。

「エイブラハム・リンカーン」はカリフォルニア州サンディエゴを母港としている。今回の寄港は短期間の休息のためとしているが、バイデン政権の意思を示すものとして行われたことは間違いない。バイデン大統領の発言が、軍事力による裏付けに基づくものとするためだ。

 これは筆者だけの考えではない。米軍の準機関紙『星条旗』によれば、米海軍大学教授のライル・ゴールドスタインは「バイデン大統領の訪日と軌を一にして、米海軍最大の海外基地2つの空母打撃群が入れ替わったのは、恐らく偶然ではない。バイデン政権は、インド太平洋に焦点を合わせつつも、入り組んだ状態のロシア・ウクライナ戦争に対処することで、『歩きながらガムをかめる』と証明しようとしている」と指摘している。

 つまりバイデン政権は、ロシア・ウクライナ戦争でウクライナを全面支援(=ガムをかむ)しつつも、本来の焦点であるインド太平洋における中国軍を封じ込める(=しっかり歩ける)ことを証明すべく、2隻の空母に艦載機を満載させた状態でこの地域に展開させ、1隻は洋上でパトロールさせ、もう1隻は横須賀に寄港させたというわけだ。

 軍事力を裏付けにしたバイデン政権の外交の妙であり、空母打撃群を活用する伝統的な米外交の最良の部分が発揮されたと評価できる。しかも、バイデン政権の“コンボ”はここで終わらなかった。