バイデン米大統領はなぜ、新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)を表明したのか。目的はもちろん、中国に対抗することにある。では、オバマ政権時の副大統領としてバイデン氏が推進した「環太平洋連携協定」(TPP)や、東アジアの「地域的な包括的経済連携」(RCEP)協定は今、どうなっているのか。それぞれの違いと関係性を整理しながら、わが国のしかるべき方向性について考える。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
軍事訓練を繰り返す中国
対抗する米国が新経済圏を構想
5月下旬に来日したバイデン米大統領は、新しい経済圏構想である「インド太平洋経済枠組み」(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)の発足を表明した。世界の政治・経済、安全保障の面でインド太平洋地域の重要性が急速に高まっているからだ。
特に、中国が軍事訓練を繰り返すなど、台湾有事のリスクは急速に高まっている。中国に対抗するために、米国はインド太平洋地域での影響力拡大を急ぎ、グローバルに張り巡らされたサプライチェーンを自国中心のものに組み替えなければならない。
中国に対抗するという点では、オバマ政権時の副大統領としてバイデン氏が推進した「環太平洋連携協定」(TPP)や、東アジアの「地域的な包括的経済連携」(RCEP)協定もある。ただし、米国はトランプ政権時にTPPから離脱した。RCEPへの参加も事実上困難だ。
他方、中国からインドなどに逃避する資本が急増している。IPEF立ち上げによって、米国は中国の影響力拡大を何とかして食い止めようと必死だ。では、TPPとRCEP、そしてIPEFの違いはどういったものなのか。関係性を整理しながら考察していく。