バイデン政権の次の一手は、この翌22日、3年ぶりに開催されていた横田基地友好祭の末尾に、大統領専用機であまたの観衆の中に着陸して登場するというサプライズだ。確かに横田基地友好祭は、写真付き身分証を提示し厳しい身体検査を受けた上で入場するが、万単位の群衆の中に大統領専用機で降り立ち生身をさらした意味は大きい。

 バイデン政権は、それだけ日本と日本人を同盟国として信頼し信用しているというメッセージに他ならない。これら一連の出来事を組み合わせたことで、一部で懸念されていた「韓国よりも後回し」に対する批判を吹き飛ばした。

 このように、米海軍と米空軍をフル活用したバイデン政権の巧みな演出により、日米同盟を新たな方向へとアップデートするという意思を軍事力によって示すことに成功した。これは日本に対する安心供与であり、中国、台湾、その他のアジア諸国などへのメッセージになったと評せる。

 異例の取り組みで日本重視を示したバイデン大統領だが、これは「IPEF」という知的財産権からの対中攻勢に日本を巻き込むためだったとみるべきだ。これはIPEFの実態を見れば明らかだ。

バイデンが軍事力と大統領の体を懸けてまで
実現したい「IPEF構想」とは

 今回の訪日に際しバイデン大統領は、IPEFの発足を表明し、日米以外にはオーストラリア・インド・インドネシア・マレーシア・ベトナム・フィリピンなどの海洋国家の13カ国で発足した。繰り返すが、この枠組みに日本を入れて、さらにインドをも巻き込むために、全ての軍事的資源と大統領の生身をバイデン政権は投じたのだ。

 それは、IPEFの本質を見ればよく分かる。巷間、IPEFはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)と同列に語られることもあるが、実際は違う。もし同列であるならばTPPを再度進めればよいだけであり、新たに作る必要はない。

 またIPEFは、TPPでは議会が貿易協定を認めなかったことを踏まえた苦肉の策との指摘もあるが、これも違う。そうであるならば、純粋な貿易協定に近いものにすればよいだけだが、実態は明らかに知財やサプライチェーンの問題に主眼が置かれており、異なる。