Roundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏生活道具を扱うRoundabout/OUTBOUNDの店主・小林和人氏

小林:それって、三浦さんが自分で編んだ物語だからですよね。その物語は現在進行形で、またここから、三浦さんが散歩して見つけたものとか、面白いものを拾ったりするなかでブリコラージュ(寄せ集めて自分で作る)されていって、どんどん変化し続ける。

 最初に取り入れようとしていた無印とか禅的なスタイルは、いうなれば既に完結したストーリーだと思うんですけど、いまの三浦さんの居心地がいい部屋の状態っていうのは、置かれてるものそのものが物語の伴走者なんですよね。暮らしという運動を一緒に走って現在進行形の物語を共に編んでいるからこそ、そこに一体感もあるし、快適でいられるっていうことなんじゃないかと。

 完全にひとつのスタイルにしてしまうというのは、動かせない物語をただ与えられているだけで、そこに立ち会って関わっている実感だったり自由さは得られない。それが第三の消費と第四の消費の違いなのかも。

三浦:拾ったもので生活をつくると、用途を変更せざるを得ないんです。みかん箱だけどタオルを入れたりだとか、陶器の箱だけどCDボックスにちょうどいいとか。そんなふうに用途を変えて使うのがいいと思ってる。

 隈研吾さんとの『三低主義』でも書いたように、「拾う」「もらう」「借りる」はこれからの暮らしの基本だと思うんだけど、無印の商品って用途が変えられないし、中古になったら魅力が減りますから。

 これはリノベーションにも言えることですが、無印良品もパターン化してしまったんですよね。すると、リノベした家に住むより、1970年代のダサい部屋にそのまま住むほうがかえって潔いというか、カッコいいという言い方ができる時代になっている。