『クウネル』はなぜリニューアルしたのか?
消費の2015年問題を考える

国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏

河尻:ちょっと話が大きくなってきたので、ここで一度整理しつつ、次に進めます。2000年代は「第四の消費」と呼んでいる時代の勃興期で、10年代になるとそのムーブメントが深化します。その代表格が「シェアリングエコノミー」でしょうね。三浦さんが『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』をリリースしたのが11年で、翌年にその名もズバリ『第四の消費ーーつながりを生み出す社会へ』が出版されます。

 当時は東日本大震災の影響やSNSの普及などもあり、社会的につながり志向が顕在化、シェアハウスやシェアオフィスが脚光を浴び、さまざまな共創型プロジェクトが盛んに行われるようになりました。

 ところが、2015年頃を境にそのムーブメントが急速にしぼんだというか、「第四の消費」は変質していった印象もあり、後半はそのあたりの話をしてみたいです。この動きは今後どうなるのか。パンデミック後も視野に入れつつ展望を話しあってみたいと。

三浦:その変化を象徴するのはメルカリですね。つまり、フリマのデジタル化。メルカリが広く認知され始めたのも15年ぐらいだと思いますが(創業は13年)、こうなってくると自分らしさを表現するフリマではなく、単にいらないものを売る便利ツールになってしまっている。

 あと、2015年以降、正社員率が増えているんです。人口が減ったせいもあって、正社員になれるようになった。アベノミクスの若者受けがよかった理由のひとつに、安倍さんが経団連に給料上げろとか、正社員にしろなどと言って、ある程度は実現できたということも背景にある。「シェアしよう」っていうことの背景には、「オレたち、困ってるんだ」っていうこともあったでしょうから。給料が上がると助け合わなくてもよくなっちゃう。

河尻:「アベノミクス」を言い出したのが2013年で、その“効果”が出始めたのも16~17年頃でしょう。広告やメディア業界を見ても、急速に五輪ムードに入っていき、第三の消費的価値観がジワッとカムバックします。それを象徴するのが『クウネル』のリニューアルなのでは?(16年1月号)。「かわいいものに、トキメキたい」をテーマに掲げて、バブル世代向けの編集に変わりましたよね。小林さんは、そのへんの変化って何か感じます?