ダイバーシティ&インクルージョンをどう進めるか?
21世紀職業財団は、今回の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」における結論として、時間あたりの生産性を適切に評価するといった制度の運用や成長実感の持てる組織風土作りなどを企業に提言している。
山谷 多様な人が活躍していくためには、時間あたりの生産性を高め、長時間労働のない職場にしていくことが必要です。また、女性がマミートラックに入らないようにするために、フルタイム勤務でも無理なく仕事と育児の両立ができるように、在宅勤務など柔軟な働き方を可能とする制度の導入が必要です。コロナ感染が少し収まってきて、テレワークをやめて出社出勤に戻した組織も増えましたが、これからの時代は、働き方の選択肢を従業員に提供することが大切でしょう。コロナ禍で変化した働き方を制度化し、しっかり運用していかないと、コロナ前の選択肢のない状態に戻ってしまいます。また、新しい制度の運用とともに、管理職にアンコンシャスバイアスの研修などを行うことも得策です。
およそ2000万人――日本の生産年齢人口の25%強を占める“ミレニアル世代”の働き方やキャリアが日本経済の進路を決めていくと言っていいだろう。21世紀職業財団はそうしたミレニアル世代をどう捉え、アプローチを続けていくのだろう。
山谷 ミレニアル世代の多くの方は、いま、子育てをしながら働いています。そして、この世代の方々は、会社の制度や国の法律が上の世代の方々の子育て時よりも整っている環境にあります。それにもかかわらず、ミレニアル世代の中で、“デュアルキャリアカップルを目指しているのに、なれない場合”の理由を今後も探っていき、私たちも、その問題解決の一翼を担いたいです。今回の調査結果から経営層や管理職の意識の変化が重要なことが明らかになりました。もちろん、法律が整っていくことは大切ですが、国が「男性も育児休業を取りましょう」と促す法律を作っても、管理職が「えっ、男性が取るの?」みたいな雰囲気を漂わせていると、ミレニアル世代をはじめ、多くの男性社員は育休を取りづらくなります。女性が出産後も就業継続しやすくなった中で次は何が必要なのかを、私たちは明らかにしていきます。
ミレニアル世代に限らず、あらゆる世代のさまざまなビジネスパーソンが、それぞれの働き方を選び、社会の中で共生していく――そんなダイバーシティ&インクルージョンの大切さを、今回の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」と山谷さんの話から再確認できた。21世紀職業財団は、ダイバーシティについての調査*15 も行っているが、インタビューの最後に、企業のダイバーシティ推進のポイントを山谷さんに尋ねた。
*15 男女正社員対象 ダイバーシティ推進状況調査(2020年度)
山谷 まず、企業のトップである経営者の方がダイバーシティ&インクルージョンの重要性を理解することでしょう。管理職は経営層の姿勢を見ているので、経営層の方々の本気度が低いと、なかなか変わりません。トップがダイバーシティ&インクルージョンの意義を社員の方々に伝え続けていただきたいです。ダイバーシティ&インクルージョンが進むことで、持続的に企業価値を創造することができると私たちは思っています。