6月の株主総会で、「史上最低」とされる6割の賛成しか得られなかった東レの日覺昭廣社長。求心力低下に神経を尖らせる日覺社長は、特集『東レの背信』に対し激怒。社内向けに怒りの「反論文書」を配信していた。特集『東レの背信 LEVEL2』(全4回)の#2は、日覺社長の知られざる「肉声」を明らかにする。(フリーライター 村上 力)
あわや否決!日覺社長続投は「首の皮一枚」
焦りの表れか、特集『東レの背信』に大反論
首の皮一枚、というのがふさわしい状況である。
つつがなく乗り切ったように見えた東レの定時株主総会だが、翌日に開示された決議結果報告は、関係者に少なからぬ衝撃を与えた。
役員の選任を諮る第3号議案。他の役員は例年通り9割前後の賛成率だというのに、日覺昭廣社長だけ多くの反対票が投ぜられ、賛成率は63%。一部の機関投資家も反対に回ったとみられ、もしダイヤモン編集部がスクープした建築資材の品質不正を隠し通すことができなかったら、あわや否決という事態もあり得た。
日覺社長は総会に至るまで神経を尖らせていたに相違ない。それはダイヤモンド編集部の記事に対する反応でも垣間見ることができる。
ダイヤモンド編集部は今年4月、特集『東レの背信』を連載。樹脂製品の品質不正の裏側をスクープするだけでなく、社外取締役である独立役員の利益相反疑惑や、日覺体制下で起きた不祥事の総括、日覺社長が手を染めた利益操作など、東レの数々の疑惑をあぶり出した。これに最も動揺したのは、他ならぬ日覺社長本人だろう。
東レは「ダイヤモンド・オンライン」で特集が配信された4月下旬も、雑誌「週刊ダイヤモンド」が発行された5月末も、対外的には特に反応することなく、表向きはやり過ごしていた。だが実は雑誌発売直後、日覺社長は「2022.5.31 ダイヤモンド社発行媒体の記事について」と題し、役員・従業員向けにメッセージを発していたのだ。