東レの背信#1Photo:Bloomberg/gettyimages

東レで再び発覚した品質不正。調査委員会が公表した報告書は、日覺昭廣社長ら経営トップの責任を不問とし、彼らに都合の悪い事実が伏せられていた――。特集『東レの背信』(全6回)の#1では、報告書がどのように“変貌”したのか、内部資料から明らかにする。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

不正の隠蔽を「英断」にすり替え
調査報告書に隠された“不都合な真実”

 数十ページにわたる、東レの内部資料が手元にある。

 東レは今年1月、樹脂製品の安全認証を巡り、米国の第三者安全機関である「UL(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)」の認証を不正に取得していたと公表。弁護士による有識者調査委員会が4月に報告書をまとめたが、手元の内部資料は、調査報告書の“下書き“といえるものだ。

 問題の樹脂製品を取り扱う樹脂ケミカル事業部が、調査委に先んじて今年1月に取りまとめた。報告書で述べられている事実経過や原因分析は、ほぼこの内部資料を基に構成されている。

 ダイヤモンド編集部取材班が今回入手した内部資料をひもとくと、調査報告書には重大な欠陥があり、隠された真実の存在が明らかになった。次ページからその内容を検証していく。