東レの背信LEVEL2#3Photo:PIXTA

特集『東レの背信』に激怒した日覺昭廣社長が作成した「反論文書」。だがうかつにも、ダイヤモンド編集部が指摘した独立役員と東レの利益相反疑惑の取引を事実と自ら認めていた。プライム上場基準に抵触する恐れも出てきている。特集『東レの背信 LEVEL2』(全4回)の#3は、社外取締役の独立性を巡る疑惑を追及する。(フリーライター 村上 力)

独立役員のファンドへ迂回出資認める
やっぱり「お友達」だった?利益相反疑惑

「現場を知らない社外取締役に何ができる」――日覺昭廣社長は、社外取締役の導入をはじめとしたコーポレートガバナンス改革に反対の立場を明確にしてきた。むしろ、四半期開示廃止など情報開示の流れを逆行させる政策を支持し、本音では株主を煩わしく思っている経営者から支持を得てきた。

 しかし、口さがない日覺社長とはいえ、上場区分の実質降格だけは避けたかったようだ。

 東証プライム基準では、取締役の3分の1以上を独立役員とすることが要件である。東レは2019年3月期まで、社内取締役17人に対し、独立社外取締役は2人と、プライム基準を下回っていた。そこで20年3月期から、社内取締役を8人に減らし、新たに元厚生労働事務次官の二川一男氏と、住友精密工業元社長の神永晉氏の2人を追加することで独立社外取締役の人数を4人とし、プライム市場の要件を満たした。

 だが独立役員の神永氏は、日覺社長が心酔する公益資本主義の提唱者、原丈人氏のファンド「デフタ・キャピタル」の実質ナンバー2である。このデフタ・キャピタルが運営する海外ファンド「DEFTA Healthcare Technologies, L.P.」(以下、DHT)に対し、東レの海外子会社が出資している疑惑があった。

 独立役員は、一般株主と利益相反の生じる恐れがないことが要件であり、東レ・日覺社長から出資の形で利益供与を受けているとなれば、神永氏は独立役員として認められない恐れがある。

 ダイヤモンド編集部は4月19日配信の『【スクープ】東レが独立役員のファンドに迂回出資か、日覺社長「お友達」社外取の利益相反疑惑』でこの疑惑を追及。東レ広報は取材に「弊方関知しておらず」と否定も肯定もせず、疑惑のままに終わった。

 日覺社長は5月の反論文書で、この指摘について次のように弁明している。

「『ダイヤモンド』の記事では、社外取締役の独立性に問題があると記載していますが独立性は、東証の『独立性基準』及び東レの『社外役員の独立性判断基準』に照らして問題ないことを確認しており、その旨は株主総会招集通知や東証へ提出している独立役員届出書に記載しています。東レの社外取締役は、経営学、研究・科学技術、行政・政策科学、事業・経営経験とさまざまな分野から選任し、多面的な意見、知見が得られる体制としています」

 ところが反論文書の別の箇所では、なんと広報がシラを切り通した疑惑の取引を社長自らが「正式な手続きで行われている」と認めているのである。

 疑惑追及に狼狽し、筆が滑ったとしか思えない、その内容を次ページで明らかにする。