東レの背信LEVEL2#1Photo:PIXTA

東レ子会社の東レ建材(東京都中央区、小川淳一社長)で、国土交通大臣から不燃材料の認定を受けている建設資材の一部が、20年近く不適切な生産方法で製造・出荷されていたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。今年3月に報告を受けた国土交通省が調査に着手している。特集『東レの背信 LEVEL2』(全4回)の#1は、その詳報をお届けする。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

大臣認定と異なる方法で建材を生産
延べ床100平方メートルの一戸建て50万戸に相当

「他に重大な不正はない」―――。

 6月23日、東京都内で開かれた東レの株主総会。今年1月に発覚した樹脂製品の品質不正問題を受け、一般株主から「これ以上、品質不正はないか」と問われた経営陣は、こう弁明したという。

 多くの株主を前にしてしらを切る気分は、いかばかりであっただろうか。実はまさにこのとき、東レは新たな品質不正の対応に追われていたのである。

 国土交通省などによると、東レの子会社、東レ建材の前身である東レグラサルは2000年ごろ、同社が製造・販売する外装材などの建材について、建築基準法に基づく不燃性能の国土交通大臣認定を取得した。ところが、03年ごろから最近まで、認定取得時とは異なる不適切な組成や生産方法に変更し、製造・出荷していたことが発覚したとして、今年3月に東レ建材から国交省に報告があったという。

 認定取得時から生産方法などに変更があった場合、国交省への申請が必要だ。だが東レ建材は20年近くにわたって申請をしていなかった。その間、出荷された対象製品の量は、面積にして合計6700万平方メートルに及ぶ。2階建てで延べ床面積100平方メートルの一戸建て住宅の外装材なら、およそ50万戸分に相当する規模だ。

 それだけではない。一部の製品は不燃性能に問題があることも分かっている。国交省は報告を受け、東レ建材に安全性の確認を指示。第三者評価機関による再検査の結果、製品の一部に、大臣認定に求められる不燃性能を満たしていないものがあったという。

「建築材料の不燃性能に欠陥があると、最悪の場合、火災になったとき燃え広がりやすいなど人命に関わる事態に直結する」。そう指摘するのは、欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事の吉岡和弘弁護士だ。

 再検査の結果、最終的に建築基準法が定める耐火性能を満たしていたとしても、「大臣認定を取得したメーカーには決められた生産方法を守り続ける責務がある。それをごまかしたのであれば、大臣認定を信じた消費者への裏切り行為であり、重いペナルティーを科すべきだ」(吉岡弁護士)という。

 一体なぜ、東レ建材は、大臣認定と乖離した生産を続ける不正を働いたのか。その原因を探ると、そこに東レが抱える重大な問題があったーー。