近年、政治家の世襲に対する批判が一段と強まっている。
だが、今回の総選挙でも多勢の世襲候補を立てた自民党が圧勝した。
自民党は候補者選定の厳正さを装うために、小選挙区での「公募」制度を採り、世襲候補もそれに応募して選ばれたのである。
有権者は、そんな形だけの儀式を百も承知の上、それを許したと言える。
それなら、多くの有権者はなぜ世襲候補を支持して当選させたのか。
答えは簡単で、世襲候補のほうが「まとも」に見えたからだ。もっと、はっきり言えば、非世襲候補が人格や能力で世襲候補にかなわなかったからだ。
今回の世襲新人議員はすべて中選挙区時代の肉親の地盤を継いでいる。要するに、親などの個人後援会が支持母体になっている。
自民党の個人後援会は、中選挙区時代よりむしろ現在の小選挙区制で一層強い力を発揮するものだ。
なぜなら、中選挙区時代には選挙区に複数の個人後援会が存在して激しい戦いを演じたが、今は、他候補はほんの小さな未経験で弱体な後援会しか持たない。だから中選挙区時代に鍛えられた基盤を持つ世襲候補の独壇場である。
非世襲の自民党候補やほとんどの民主党候補は、個人後援会ではなく、党の支持団体が選挙の中核を構成するから、どうしても広く深く手が届かないのだ。それが小選挙区で出てきた政治家の弱みである。
今後ますます世襲政治家は増加
政治劣化、身分社会化の恐れも
こう考えると、良くも悪くも日本の政治は今後20年近くさらに増加する世襲政治家によって支配されることになる。
民主党は世襲政党に対抗する勢力として期待されたが、それに応えることができなかった。日本の政治史上、最悪な役割を果たしてしまったと言われても仕方があるまい。