合併前の町議になったのは40代。電気設備会社を経営し、政治に関心はなかったが、「地元の部落(町内会)に推されて出馬した」。初当選後、自民党入り。その時に一緒に当選した町議全員が自民党員だった。その後、合併で市になっても当選を重ねてきた。自らの故郷である旧町の衰退が気になる。旧町にあった県立高校は廃校になった。かつて20人弱の町議がいたが、合併後の市議で、旧町出身者は3人だけ。「企業誘致で旧町を活性化したい」と思うが、うまくいかない。総裁選では白票だった。安倍氏の外交は評価できるが、地方が疲弊している中での経済対策に不満がある。

 一方、石破氏の安倍政権批判や地方の活性化策には共感できるものの、永田町で仲間を作る努力を怠っており、「本気で総理をめざす気迫が足らない」と感じた。

「石破さんには角栄さんのような行動力がない」。

『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』『自民党の魔力 権力と執念のキメラ』
蔵前勝久 著
定価935円
(朝日新書)

 久万高原町議の日野明勅氏も田中氏を選んだ。中山間地にある典型的な過疎の町だ。「限界集落が消滅集落になっている」。移住者を増やそうとしたが、そう簡単ではない。以前から角栄氏のファンで、『日本列島改造論』をむさぼり読んだ。「角栄さんがいれば、過疎高齢化問題に本腰を入れてくれるのではないか」。田中氏の選挙区だった新潟県長岡市に行った際、立派な道路やトンネルに感動したことを覚えている。「我田引水かもしれないが、素晴らしかった。ああいう人じゃないと、田舎の人の気持ちは分からない」と話した。

 一方、安倍氏を「歴代で最も評価する総裁」に選んだ県議は、都市部にある地元の製造業が好調でアベノミクスを評価した。

「田中氏のようなグレーな古い首相は今の時代では通用しない。もう一歩進んだリーダー性が求められる」と語った。

 田中、安倍両氏につぐ3位は郵政民営化など構造改革を進め、「自民党をぶっ壊す」とぶち上げて人気を集めた小泉純一郎元首相で19人(9%)が支持した。安倍、小泉両氏はそれぞれ長期政権を築いており、わずか2年間しか首相の座にいなかった田中氏への評価が際立っていた。

《『自民党の魔力』(朝日新書)では安倍政権前から連綿と続く「自民党の強さの秘密」を詳述している。》

AERA dot.より転載