安倍晋三,田中角栄安倍晋三氏(左)、田中角栄氏 Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages, Bettmann/gettyimages

 7月8日、選挙演説中に安倍晋三元首相が銃撃された事件は、国内外に大きな衝撃を与えた。安倍氏は首相引退後も自民党の最大派閥「清和会」の領袖(りょうしゅう)として、影響力を持ち続けた。その影響は当然ながら、自民党に所属する全国津々浦々の地方議員にも及んでいる。2018年に行われた自民党総裁選の際に地方議員を対象に行ったアンケートでは、「歴代で最も評価する自民党総裁」として安倍氏と田中角栄氏を推す声が突出していた。二人が地方議員から支持される理由は何か。朝日新書『自民党の魔力』(蔵前勝久著)から、一部を抜粋して解説する。(文中の肩書は当時のもの)

自民党地方議員の平均的な考え方

 自民党の地方議員の「平均的な考え方」をみていきたい。舞台は愛媛県である。2018年秋の自民党総裁選は安倍首相と石破茂元幹事長の一騎打ちになった。安倍氏が国会議員票の8割以上を得て、圧勝し、3選を決めた。ただ、党員・党友が投票する地方票では安倍氏55%、石破氏45%となり、石破氏の善戦とされた。

 なぜ、石破氏は地方票で善戦できたのか。その理由を探ろうと、朝日新聞と東京大学大学院の前田幸男教授(政治学)との共同調査という形で、愛媛県の自民党所属の地方議員にアンケートを行った。愛媛を選んだのは、同県の地方票が、全国平均と同じ安倍首相55%、石破氏45%だったからだ。もちろん、地方票は党員・党友票であり、地方議員と全く同じとは言えない。ただ、地方議員は国会議員より日常的に党員と接することが多く、地方議員の回答は、一般党員の意識をより反映していると考えた。愛媛を「全国の縮図」と見立て、アンケートを取ることによって「自民党の地方議員の平均的な考え方」を探ることにしたのだ。