「なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?」SNSに潜むウソ拡散のメカニズムを、世界規模のリサーチと科学的研究によって解き明かした全米話題の1冊『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』がついに日本に上陸した。ジョナ・バーガー(ペンシルベニア大学ウォートン校教授)「スパイ小説のようでもあり、サイエンス・スリラーのようでもある」、マリア・レッサ(ニュースサイト「ラップラー」共同創業者、2021年ノーベル平和賞受賞)「ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理が見事に解き明かされるので、読んでいて息を呑む思いがする」と絶賛された本書から一部を抜粋して紹介する。

「一人勝ち・勝者総取り」が発生する経済学的なしくみPhoto: Adobe Stock

4種類のネットワーク効果

 ネットワーク効果は引力に似ている。ネットワークにつながっている人が多いほど、そのネットワークの「質量」は増えると言っていいだろう。質量が増えるほど、引力は強くなるのだ。

 ネットワークの質量が増えれば、それだけ多くの人を引きつけることができ、経済的な利益をあげる機会も増え、そのおかげで既存の参加者も引き留めておくことができる。

 ネットワーク効果には4つの種類がある。直接の効果、間接的な効果、二面的な効果、ローカルの効果の4種類だ。それぞれ、ハイプ・マシンの戦略や運命に果たす役割は違っている。

(1)直接のネットワーク効果

 直接のネットワーク効果とは、人々を直接つなぐことによって生まれる価値のことである。

 たとえば、私が世界で初めてファクシミリの機械を所有した人間だとしよう。私だけが機械を持っている状態では、価値はないに等しい。せいぜいドアストッパーに使えるくらいだろう。私以外に誰も機械を持っていないのだから、誰ともファックスをやりとりすることはできない。

 機械を買う人が増えれば、それだけファックスをやりとりする相手が増える。フェイスブック、ツイッターをはじめ、ハイプ・マシンは、この直接のネットワーク効果から莫大な利益を得ている。

 一部のソーシャル・メディアが市場を独占するほどの力を持ち、経済に革新をもたらしているのは、この直接のネットワーク効果のおかげと言っていい。

 質的に劣ったソーシャル・メディアが、良質のソーシャル・メディアを圧倒して市場で独占的な地位に就くことがあるのも、直接のネットワーク効果のおかげだ。