(4)ローカルのネットワーク効果

 ハイプ・マシンにとって最も重要なのは、ローカルのネットワーク効果である。

 位置によって強さの変わるネットワーク効果だ。つながる対象が近ければ近いほど、それに比例してローカルのネットワーク効果は高まる。

 たとえば、「ネクストドア」という地域コミュニティに特化したSNSがあるが、ダラスで誰か一人、ネクストドアに新たに参加する人がいると、ダラスの他のユーザーにとって、ネクストドアの価値は向上することになる。だが、サンフランシスコのユーザーにとっては、ほとんど価値は向上しない。

 ただ、ローカルのネットワーク効果における「近さ」は、必ずしも物理的な距離の近さだけを意味しない。

 社会的な距離の近さも重要である。ある人にとって直接の影響が強い人は、社会的な距離が近いと言える。ほとんどの人は、ネットワーク上のごくわずかな人たちから直接の大きな影響を受けている。社会的な距離の近い人の数はごくわずかであることが多いということだ。

 ネクストドアでは、物理的な距離が近いユーザーどうしがつながっている。フェイスブックでは、社会的な距離が近いユーザーどうしがつながっている。

 あなたにとって、フェイスブック、ツイッター、ワッツアップ、ウィーチャットの価値はどこから生じているのかを考えてみよう。

 自分の知人や、そのソーシャル・ネットワーク上でつながっている人たちから生じているのではないだろうか。

 ソーシャル・ネットワーク上に30億人を超える人がいたとしても、自分の知らない人、自分とつながっていない人からはたいした価値は生まれないはずだ。

 もちろん、まだつながっていないけれど将来はつながるかもしれないという人たちが大勢いることも価値ではある。

 だが、たとえば、同じネットワーク上に有名人がいたとして、その人に一方的にダイレクト・メッセージを送りつけても、価値あるつながりが生まれる可能性は極めて低いだろう。せめて友達の友達の紹介くらいはないと、つながれることはほぼない。誰かとすでにつながっていることと、つながれる可能性があることとは明確に区別する必要がある。

 注意すべきなのは、ユーザーにとってのネットワークの価値は、どれだけその人にとって価値ある人とつながっているかで決まるということだ。同じネットワーク上にどれだけ多くの人がいても関係ない。ローカルのネットワーク効果の強さが重要ということである。

 ソーシャル・ネットワークの競争力は、ユーザーにどれだけローカルのネットワーク効果をもたらせるかで大きく変わると言っていいだろう。ハイプ・マシンが今のような姿になっているのはそのせいだ。

【参考文献】
(1) Casey Johnston, “Microsoft Pays ‘$100,000 or More’ to Get Devs Coding for Windows Phone,” Ars Technica, June 14, 2013, https://arstechnica.com/information-technology/2013/06/microsoft-pays-100000-or-more-to-get-devs-coding-for-windows-phone/.
(2) “Mobile Operating System Market Share Worldwide, February 2019-February 2020,” Statcounter, n.d., https://gs.statcounter.com/os-market-share/mobile/worldwide.

(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)