理系でも、総合商社が上位に来ている理由は…
最近のランキング上位企業の傾向で気がつくのは、文系と理系、男子と女子で、明らかな違いが少なくなってきていることだ。この傾向は3、4年前から顕著になっている。
高村 以前から、総合商社は事業領域の広さやグローバルに活躍できるイメージから、文系男子ランキングにおいて絶対的な強さを誇ります。それが理系にも広がってきた背景には、産業界全体にDX化の流れがあり、総合商社が理系学生の採用に力を入れるとともに、「理系の社員が活躍している」という点を積極的にアピールするようになっていることがあると思います。
女子の間で総合商社が上位に来ているのも同様の理由からです。総合商社のほか、大手の金融やデベロッパー各社は「女性社員が社内で活躍している」ことを積極的に広報しています。
社会全体で少子高齢化が進むなか、優秀な学生を確保することに対しての危機感は、有名企業や大手企業でも強まっています。そうした流れのなかで、文系と理系、男子と女子といった枠を超えて、企業間の採用競争が激しくなっています。
もうひとつ、最近のランキング上位企業を見て分かるのは、男子・女子ともに、文系では損保、理系ではデベロッパー系が複数社ランクインしていることだ。
高村 損保では3メガ体制確立以降の最高益を見込む東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、損害保険ジャパンの人気が高いです。
文系女子は、以前は、航空会社や旅行会社が人気でした。マスコミ志望も含め、“憧れ”が人気に反映していました。それに対して、近年は、結婚・出産を経て子育てをしながら長く働けるのか、活躍する場があるのかという点に女子学生の関心が移ってきています。
理系女子におけるデベロッパー系企業の人気も同じような背景があると見ています。コロナ禍で多くの企業が打撃を受けるなか、業績が安定していることが評価されているのです。また、大手デベロッパーは都心の再開発を多く手掛けており、「話題のスポットを作る企業」といった視点での支持があるようです。
なお、理系の学生についていえば、自分の専攻を生かしたい気持ちが強い点はこれまでと変わりません。そうした理系学生に対し、総合商社やデベロッパー系企業は「あなたが専攻してきたことは小社でも生かせます」と積極的にアピールしています。
具体的には、インターンシップやキャリア教育、採用広報を通じて、理系出身の社員が幅広い事業フィールドのなかで理系の素養を生かして活躍している様子を伝えています。そのことで、「自分たちも活躍できる舞台がある」「専門的な経験と知識を生かしながらキャリアを作れる」と、理系の学生が好意的に見ているのです。