電力業界の頂点に君臨する東京電力ホールディングスにとって、都市ガス業界の王者、東京ガスは永遠のライバルだ。売上高の規模、顧客基盤において東電が東ガスを長年にわたって圧倒してきた。果たして、中高年社員の待遇も東電が東ガスを上回るのだろうか。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#6では、900万円という大きな格差を生む背景に迫る。そしてその格差はさらに拡大するかもしれない。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
福島第一原発事故を境に
東電社員の待遇が暗転
首都圏を地盤とする東京電力ホールディングスと東京ガスは、顧客の光熱費争奪戦で激しくしのぎを削ってきたライバルだ。
持ち株会社制度に移行する前の旧東京電力が2004年、タレントの鈴木京香さんがCMでオール電化住宅の導入を訴える「Switch!」キャンペーンを仕掛けると、東ガスは、06年からタレントの妻夫木聡さんが都市ガスをアピールするCMシリーズ「ガス・パッ・チョ!」で対抗した。
ライバル関係にあるとはいえ、東電は東ガスより会社としての格がはるかに上だと自負してきた。当時は東ガスの5倍近い売上高5兆円、顧客基盤はほぼ2倍の2200万件に上り、そして財界のトップである経団連会長を送り出す名門企業としての矜持があったからだ。
むろん、社員の待遇も上回っていた。10年3月期の有価証券報告書によると、管理職を含まない東電社員の平均年間給与は約757万円。これに対し、東ガスは約718万円だった。
ところが、である。11年3月に発生した東電福島第一原子力発電所の事故を境に、東電社員の待遇は暗転する。
次ページ以降では、東電と東ガスのベテラン社員が57歳での年収で最大900万円もの差がつく裏事情を、具体的な年齢や役職などを基につまびらかにしていこう。すると、この格差がさらに拡大する可能性も見えてきた。