役職定年の悲哀#13Photo:PIXTA

役職定年制度がある企業とない企業に大きく分かれる小売り・流通業界。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#13では、小売り・流通業界の状況を取り上げる。セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下で唯一制度があるイトーヨーカ堂では、役職定年以外にもグループ独自の制度が。一方日本郵便で昨年からスタートした「給料がほぼ半額になる」厳格制度には現場から悲鳴も上がっている。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

最大手2社でも年収1000万円を超えない
給料は安い小売り・流通業界の役職定年事情は?

 社員数が多く、そして平均給与が安い小売り・流通業界。役職定年制度の状況はどうなっているのだろうか。

 傘下に総合スーパーを抱える小売り大手は、概して社員数が多い。セブン&アイグループで8万3635人、イオングループで15万5465人いる。さらに、平均年間給料はセブンが739万円、イオンが856万円(共に親会社のみ、有価証券報告書ベース)で1000万円を超えない。最大グループの2社がこの水準ということは、あとは推して知るべしだ。

 ちなみにコンビニではローソンが同1万0362人・634万円、ファミリーマートが6881人・618万円、百貨店では三越伊勢丹HDが9691人・711万円、丸井グループが4654人・642万円、専門店ではファーストリテイリングが5万5589人・964万円となっている。

 小売業の場合、現場で販売に従事するのは臨時雇用の契約社員や非正規雇用社員の比率が圧倒的に高い。フランチャイジーを束ねるコンビニチェーンの場合は本部の規模が比較的小さく、直営店を持ち運営するスーパーなどの場合は社員数が比較的多い。

 また、元ダイエーグループのローソンや、元西友グループのファミリーマートなど、スーパーグループから分離して商社傘下に落ち着いた企業と、再編を経ずに今に至る企業とでは、その成り立ちが大きく異なる。そのため、役職定年制度に関してもシニア社員の活用については大きく分かれた。

 役職定年制度とは、一定の職位や年齢になると職を解かれ、部下なしとなる制度のこと。多くは給料が激減してしまうだけに、もともとの水準が低い小売り・流通業界のシニア社員にとっては死活問題といえよう。

 セブン・イレブン-ジャパン、イトーヨーカ堂、ローソン、ファミリーマートや三越伊勢丹HD、丸井グループ、ファーストリテイリング、日本郵便について、シニア人事制度の詳細、年齢、役職、給料の減額幅などを具体的に見ていこう。日本郵便のように「給料がほぼ半額になる」制度がスタートしている会社もあり、シビアな現実が浮かび上がった。