役職定年の悲哀#11Photo:PIXTA

65歳までの定年延長導入に伴い、霞が関官僚などの国家公務員と全国274万人の地方公務員にも2023年4月から役職定年制度が適用される。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#11では、シニア公務員の働き方を取り上げる。これまで定年前の出向などが主だったシニア公務員の働き方はどう変わるのか。民間企業のように給料が激減するシニアも登場するのか。内閣官房、総務省への取材で全体像が明らかになった。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

公務員65歳定年制開始で
国家・地方公務員に何が起きるか?

 役職定年制度の見直しやジョブ型への移行などに動く企業が増える中、これから導入するところもある。全国で国家59万人、地方274万人が存在する公務員だ。

 国家公務員には、霞が関や地方にある国の機関に勤めるいわゆる官僚、それに検察官などの「一般職」と呼ばれる公務員が約29万人、そして裁判官、防衛省職員、大臣などの「特別職」と呼ばれる職員が約30万人いる。さらに全国に散らばる地方公務員、合わせて330万人余りがゆくゆくはこの制度の対象になることになる。

 そもそもなぜ今、公務員で役職定年制度が採用されるのか。それは公務員の定年延長に伴うものだ。

 国家公務員法と地方公務員法の改正により、2023年4月から国家・地方公務員の定年が、現在の60歳から段階的に引き上げられることになった。2年ごとに1歳ずつ定年を引き上げ、23年度と24年度は60歳定年を61歳定年に、25年度から26年度は62歳に、というように徐々に延ばす。31年度以降は65歳定年制に完全に変わる。

 民間企業でも今後25年4月から65歳への定年延長が義務化されるが、公務員もこれに合わせて延長となるわけだ。これに伴って、60歳以降の職員に適用されるのが役職定年である。つまり「50代のある時期で役職を外されて給料をカットされる」という、本特集で見てきた民間企業の役職定年とは少し意味合いが異なる。

 そもそも、これまでシニア公務員の働き方はどうなっていたのか。キャリア官僚の天下りなどに代表されるような、定年前の自主退職や企業、団体への転職が一つ。それに60歳以降の「再任用」制度を利用するのがもう一つの手段だ。

 再任用制度は13年から年金支給開始年齢が65歳に繰り下げられたため、無年金となる期間の収入を補うためにできたものだ。

 1年更新で、希望者は全員応募できるが、給料は大幅に下がる。公務員の給料は役職と職務について与えられる「級」と、年次や評価によって定まる「号俸」で決まるが、再任用の場合はどんなに高い号俸だった人でも級によって固定の、しかもほぼ最低の号俸にまで引き下げられてしまうからだ。

 この再任用制度が廃止され、それに順次入れ替わっていく制度が、今後採用される定年延長と役職定年制度というわけだ。その内容はどうなっているのか。

 最も気になるのは「再任用制度よりも給料は下がるのか?上がるのか?」だろう。その点を含めて、年齢、役職、金額など具体的に変更の中身を紹介。新制度で業務過多の若年公務員の働き方は改善されるのかも、次ページで見ていこう。すると、公務員向けの役職定年制度は、かなり思い切った制度であることが浮かび上がってきた。