奥井 サッカーノートに書いてある内容は、抽象的なものから具体的なものまで、多岐にわたっているようですね。

田中 サッカーノートに書く内容は、主に2種類。メンタル的なことと、技術・戦術的なこと。僕は、結局のところメンタルが一番大事だと思っています。だから、8~9割はメンタルに関する内容です。

 メンタルが大事だということを理解していたつもりでしたが、その重要性を痛感したのは、特に海外に行ってからです。海外では、助けてくれる人は誰一人いない。そういう状況でも、自分としっかり向き合って、自分を向上し続けることが求められます。それをできる人ほど、プロとして抜きんでているのだな、と感じました。

 環境の変化に順応する力が、日本人は大いに低いのかなと感じます。日本は治安もいいですし、便利できれいな国です。でも、海一つ渡ってみて、それがとても恵まれた環境だということを痛感した。自分自身の体はもちろんのこと、海外のタフさにいかに心をフィットさせるかがとても重要だと思いました。

奥井 サッカー選手の海外進出とは異なりますが、ビジネスパーソンの中にも転職して違う会社に行くとなると、新しい職場の環境などにフィット感がなく苦労する方がいらっしゃいます。田中選手の場合、どうやってタフさを身に付けていったのでしょうか。

田中 結局、その環境で生き残りたいのなら、適応するしかない。サッカーの場合、もしそこで活躍したいなら、それは受け入れるしかないなと思っています。もちろん全てに適応する必要はないのですが、何を受け入れるべきか判断することが大事だと思います。

やっぱり「海外には早く行った方がいい」と
感じたワケ

奥井亮奥井亮氏 Photo by T.U.

奥井 人それぞれだとは思いますが、海外に進出するタイミングについてはどのようにお考えですか。もっと早く行った方がよかったとか、ちょうどよいタイミングで海外に行けたなど、ご自身の経験を踏まえて教えていただけますか。

田中 2021年、22歳のときにドイツに渡りました。僕にとっては、それがちょうどいいタイミングだったと思っています。ただ、仮に自分より若い世代に海外に行くタイミングについてアドバイスをする機会があれば、早く行った方がいい、と言います。

 今まで「早く海外に行った方がいい」という言葉はよく耳にしていましたが、実際に行ってみて、たしかにその通りだと感じました。

 日本人の中でサッカーをするのと、海外でいろいろな国籍の人に交ざってサッカーをするのとでは全然違います。日本人は、育っている環境が似ているのでフィーリングが合うんです。海外に行くと、海外の選手とのフィーリングが合うか合わないか、というのは大きな問題になります。若いうちに、彼らのフィーリングを知っておくと、大きな抵抗を感じることもなく海外のチームに溶け込めるようになると思います。これは、海外で活躍する上で大きな強みになります。