田中碧田中碧選手 Photo by T.U.

田中 プロ1年目、2年目はほとんど試合に出られず、このままだと自分は引退するな、と思っていました。当時は技術面をどう磨いていくか、ということまでしか考えられなかった。試合に出始めて、いろいろな選手とプレーをしていくにしたがって、自分の考え方やサッカーに対する姿勢も含め、「どうしたらこの世界で生き残っていけるのか」を考えるようになりましたね。

 もともと自分は、プロとしてエリートではないという自覚がありました。加えて、当時、僕が所属していた川崎フロンターレは強豪チーム。そんな状況だったので、まずは「3年後には毎試合ベンチにいて、スタメンで試合に出ることを争える立ち位置になる」という目標を立てました。つらい時期もありましたが、3年目では目標を超える結果を出すことができました。

奥井 3年後の目標を決めると、目標達成のために「いつまでに何をすべきか」というところまで分解する必要がありますよね。それについては、どのように考えていたのでしょうか。

田中 1週間や、1カ月で区切って考えるのではなく、「毎日の延長線上に目標がある」と捉えています。「今できていないこと」を一つ一つ確実に改善していけば、いずれ目標にたどり着ける。

 仮に今、いい結果が出ていなかったら、過去の自分がさぼっていたからだ、と僕は思ってしまいます。だからこそ、今やれば3年後の自分は幸せになるんだ、と思って必死になることができます。

海外で痛感したメンタルの重要性
体も心も適応する力が必要

奥井 田中選手は、高校1年生の頃から、感じたことや受けたアドバイスを「サッカーノート」に書き留めてきた、と伺いました。なぜ、サッカーノートを書くようになったのでしょうか。

田中 目標って、決めても忘れてしまいますよね。書けば、見返せるし、忘れない。

 書いた内容を、毎日意識してプレーする。すると、次第に無意識的にできるようになっていく。ただ、ほかにできないことが出てきてそちらに意識がいきすぎると、無意識にやっていたことができなくなってしまう。そうなると、振り出しに戻ってまた意識し直してプレーする……ということを繰り返していきます。

 試合中に意識し続けてきたことができると、気持ちいいですね。その成功体験が、僕の成長の原動力です。成功体験ができるまでは、まだノートに書いた内容を自分が理解できていないと思っていて。試合で成功するまでは、ひたすら意識して自分のプレーに落とし込む、という作業をし続けなければいけません。