昭和レトロから平成レトロへ~90年代ブームの先に存在する“Y2K”カルチャー

 ここまでのトピックはすべて、2020年代に入ってからはブームが落ち着き、定着化が進んでいる。では今、Z世代は何に注目しているのか。インターネット発のムーブメントが評価・再構築したサブカルチャーコンテンツが70年代、80年代、90年代と推移していった先にあるもの、それが2000年代初中期のポップカルチャー、通称“Y2K”と称されるものだ。

 当初Y2Kとは「2000年問題」にまつわる文脈で用いられていたスラングだったが、今では「ゼロ年代を想起させるデザインやコンテンツ全般」を意味する語句へ変わり、欧米圏におけるセレブ・カルチャーと日本固有の“kawaii”カルチャーが結びついた独自のものへと進化している。

 どの国に生まれようが、ネットを通して文化を吸収することが自然となった今、カルチャーにおいては国境という壁が取り払われた。そして、さまざまなコンテンツを見つけ、集め、再構築して享受していくコラージュ・アートのような消費文化が、Z世代以降の普遍的な感覚になったといえるだろう。

 そして、技術の発展に比例してコンテンツの消費サイクルも際限なく加速しており、Y2Kすら過去のものとして扱う層も出てきた。もはやZ世代のカルチャーには、時間軸さえ存在しなくなりつつあるのだ。