日本発、日本市場向けのカルチャーが世界に「再発見」された理由

 そもそも、いわゆる「邦楽」や「J-POP」に位置付けられる作品の多くは、日本国内での流通・消費に主眼が置かれたものだ。海外のトレンドを日本人的な切り口で再解釈した独自の文化であり、演奏するのも聴くのも日本に住む日本人。海外進出はほとんど考慮されてこなかった。

 そういったある意味ドメスティックな文化だった過去の音楽が、現在の価値観に照らし合わせて発見され、日本国外で親しまれるようになった背景にあるのは、インターネット文化だ。

 たとえば、2000年以降にネットで発展した音楽ジャンル・ヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)の根底には1980年代頃の大量消費社会への皮肉とノスタルジーがあったといわれるし、それをよりダンス・ミュージック的な解釈でデフォルメしたジャンル・フューチャーファンク(Futurefunk)では、既存楽曲を再構築する「サンプリング」という手法が広く取り入れられた。その中で“参照元”として日本の古いポップスやアニメ、CMなどが多用されたことが、昨今のシティポップ・リバイバルを押し広げたのである。

 ヒットした(=YouTubeなどでたくさん再生された)こうした曲の多くは、過去のシティポップをサンプリング・リミックスした音に、日本の古いアニメやCMなどの絵を重ねるという形で作られた動画だ。

 そんなリバイバルを語る上で欠かせない代表例が、竹内まりや『プラスティック・ラヴ』だろう。とあるアカウントがYouTubeへ当楽曲を無断転載したことをきっかけに、非公式リミックスなどを経て大きな反響を獲得し、映像に使用された『美少女戦士セーラームーン』の映像とともに日本のサブカルチャー人気を得た。