Z世代が見つめるポップカルチャーに、もはや国境は存在しない

 2010年代に差しかかるまで、海外において日本のポップカルチャーを享受する手段の多くをインターネット上のシェア文化、つまりは無断転載や違法アップロードといったダーティーな方法論が占めていた事実がある。

 これらは当然、著作権的にはNGなのだが、非日本語圏の人々がコンテンツを受け入れるにあたって、大きな壁となったのが言語の特殊さと流通経路の乏しさであり、それらを解決する手段として匿名ユーザーによる翻訳やアップロードが行われていたのだ。また、邦楽がそうだったように、コンテンツの作り手も客も日本人で、権利を持つ本人や団体が海外へ作品を積極的に展開していくこともなかったのだから、海外の人がコンテンツに触れるのは事実上違法なものしかなかったという事情もある。しかし、このような問題はサブスクリプション型のストリーミングサービスが普及した2010年代中盤以降、ある程度の解決を見せる。

 ローカライズされた高品質なコンテンツを定額で消費できるようになったことで、こうしたハードルは公的にクリアされ、インターネットさえあれば過去の名作から最新のコンテンツに至るまで、誰もが等しくチェックできる時代が到来したのだ(まだまだマンガなどの国産コンテンツは違法に流通しているものが多いが)。

 また、ストリーミングの普及とともに国内外におけるコンテンツの普及率やタイムラグが改善されたこともあり、アニメやゲームといった文化が映画やドラマなどと同一のものとして扱われ、Z世代にはオタク文化とポップカルチャーの壁が存在しなくなった。時代の流れを受け、もはや「当たり前のもの」として認知を広げていったのだ。