「一見それほどでもない症状でも、実は放っておくとこわい症状も少なくないのです。最初は気にもとめないわずかな症状が、放っておくと、取り返しがつかない大病になることもあります」。そう話すのは、テレビでも人気の総合内科専門医・秋津壽男氏だ。体からのSOSサインに気づかず、後悔することになってしまった方をこれまでたくさん見てきたという。秋津医師の新刊『放っておくとこわい症状大全~早期発見しないと後悔する病気のサインだけ集めました』は、まさにこうした病気で後悔する人を少しでも減らしたいという想いから生まれたものだ。本書の内容を抜粋するかたちで、日々の健康チェックに役立つ情報を紹介していく。(初出:2020年9月11日)
「ウンチ」は体からの便り
便の色は、多少なりとも食べたものに影響されます。いか墨リゾットを食べれば、墨汁のような便が出てくることもあるでしょう。
ただし、そんな黒い便が何度も出るときは注意してください。とくに泥状の真っ黒な軟便が出た場合は、すぐにお医者さんに行ったほうがいいでしょう。
病的な黒い便は「タール便」ともいわれ、その主な原因が胃がんです。胃の出血により便に血が混じり、便が黒くなるのです。私のクリニックにも「真っ黒な便が出た」と駆け込んできた男性がいました。すぐに胃カメラ検査をしたところ、胃の奥が出血し、がんのような潰瘍を発見。すぐに手術できる病院を紹介した結果、やはり早期の胃がんでした。
ここで覚えておいてほしいのは「危険な便の色」についてです。
●便が「黒い」→胃がん、胃潰瘍
●便が「赤い」→大腸がん、大腸ポリープ
●便が「白い」→胆管がん、膵頭部がん
このように便の色によって、どこが悪いかがわかります。便は健康状態を知る重要なバロメーターになるのです。おかしな色をしていないか、ちらっと見る癖をつけておきましょう。
なお、便が白くなる胆管がん、膵頭部がんは、非常に予後が悪いがんです。白くなる理由は胆汁にあります。人間の便は、もともとバリウムのような白色をしていますが、胆汁によって黄色くなります。この胆汁の通り道がふさがってしまうと、胆汁が腸に出ないため、便が黄色くならないのです。
胆石の可能性もありますが、その場合は激しい痛みをともないます。痛みがあまりなく、便だけ白くなっている場合はがんの疑いが濃厚です。胆汁の通り道である胆管のがんや、膵臓の頭部と胆管の合流部あたりにがんができる膵頭部がんが考えられます。
(本原稿は、秋津壽男著『放っておくとこわい症状大全』からの抜粋です)
秋津医院院長
1954年和歌山県生まれ。1977年大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をし、和歌山県立医科大学医学部に入学。1986年に同大学を卒業後、循環器内科に入局。心臓カテーテル、ドップラー心エコー等を学ぶ。その後、東京労災病院等を経て、1998年に東京都品川区戸越銀座に秋津医院を開業。下町の一次医療を担う総合内科専門医として絶大な支持を集める。現在、「主治医が見つかる診療所」(テレビ東京系列)にレギュラー出演中。ベストセラーとなった『長生きするのはどっち?』『がんにならないのはどっち?』シリーズ(あさ出版)ほか、著書多数。新刊『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)が2020年9月16日に発売。