最近の外食メニューは、健康志向を反映し「減塩」をうたうものが多い。物足りず、塩や醤油を足す方もいるだろう。
米テュレーン大学の研究グループは英バイオバンク参加者50万1379人のデータを使い、食卓で塩を使う頻度と、平均余命の関係を解析している。
9年間の追跡期間中に、75歳以前に死亡した早期死亡例、1万8474人について食塩の使用頻度と死亡率の関係を解析。食塩の使用頻度は、(1)全く使わない/ほとんど使わない、(2)時々使っている、(3)大抵、使っている、(4)常に使っている、の4群で分類している。
解析の結果、(1)の食塩を全く使わない/ほとんど使わない群を1とした場合、(2)の死亡率は1.02倍、(3)は1.07倍、そして常に食塩を使っている(4)の死亡率は1.28倍に増加していた。また(4)の50歳時点の平均余命は、女性で1.50年、男性で2.28年短縮、60歳時点ではそれぞれ1.37年、2.04年短縮されると予想された。
一方、体内でナトリウム(塩)の排せつを促すカリウムの摂取――つまり野菜や果物の摂取量が増えると、早期死亡リスクが多少は改善されることが示されている。
研究者は「食卓で塩を振りかける頻度が高くなるほど、早期死亡リスクが上がり、平均余命が短くなる」と結論している。
とはいえ美味しい「塩気」を諦めるのは難しい。研究者もあの手この手で解決策を模索している。
明治大学大学院先端数理科学研究科の宮下芳明研究室はメーカーと共同で塩味を増強する「電子箸」を開発。舌に弱い電流を流して味覚を増強/抑制する仕組みだ。
日頃減塩食を食べている40~65歳の男女36人に、減塩の試験食と、それより40%以上高塩分の試験食を「電子箸」で食べてもらったところ、どちらも同じ塩味に感じたという。つまり、薄味のわびしさを感じることなく30%の減塩が可能だというわけだ。
この電子箸、塩味だけでなく旨味やコクも濃くするようで、味気ない減塩みそ汁も美味しく食べられるらしい。そのうち減塩食ならぬ「減塩箸」が市販される日が来るかもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)